8月9日に開催された堺市北部地域整備事務所アスベスト飛散の検証に関する懇話会のようす。傍聴者から「行政対応の検証せよ」との声も上がった(井部正之撮影)

大阪府堺市の市北部地域整備事務所で除去工事後も煙突内に市が否定してきたアスベストの残存が確認された問題で、今度は、市は、取り残しは「極小」と強調するようになった。ところが、市が設置した有識者会議でもこうした市の対応を批判する声が上がった。(井部正之・アジアプレス)
関連写真を見る:人体蝕むアスベストの恐怖。石綿はすぐ身近にあった(9枚)

◆調査した協会内でも意見に相違

堺市は8月9日、専門家による煙突内調査後、初めてとなる市の有識者会議、堺市北部地域整備事務所アスベスト飛散の検証に関する懇話会(座長:東賢一・近畿大学医学部准教授)を開催し、煙突内のアスベスト残存について説明した。

市は5月末の煙突内調査の結果について、市が撮影した映像から抜き出した写真を示しつつ、「筒状の鉄管と煙突の壁の間のすき間の部分にアスベストの小塊が残存」「煙突内部の壁面に帯状に疑義物質(アモサイトと確認)が残っていた」などと言及。6月の市議会で市は「残存は極小」と強調したが、この日の会合では調査結果を読み上げる程度だった。

市の説明後、5月27日の建築物石綿含有建材調査者協会(貴田晶子代表理事)による現地調査の際、市職員らと現場でようすを見ていた大阪アスベスト対策センター幹事の伊藤泰司委員が「協会内部でも意見が割れていた」と証言した。

「協会内でも粗い仕事であるという意見と、この業界では普通じゃないかという両方の意見が併存していた。中心になっている方がまとめられないよとずっとおっしゃっていた。そのため中間報告では、両論が反映するような書き方をされていた」

そうした状況を踏まえて伊藤委員はこう市に対して注文をつけた。

「どっちか一方の意見が載っているからといって、極小ということを全面に出した言い方をしないでほしい。少なくとも協会として決を採っているわけではない。(中間報告は)両論併記となっており、一方では荒いと評価している。堺市は2つの意見があるということをありのままに伝えるようにしていただきたい」

「極小」と市が強調するのは片手落ちとの指摘である。

市建築部の澤中健部長は「いろいろな意見があったのは聞いております」と認めた。

★新着記事