(参考写真)取締りを避けるために裏道を自転車で疾走する食糧運びの女性たち。2008年8月平壌市郊外の農村部で、撮影チャン・ジョンギル(アジアプレス)

◆死刑も辞さないと強硬な金正恩政権

収穫穀物の移動統制は毎秋行われるのだが、今年の厳重さは尋常ではない。当局は9月初めに「布告」まで発表したが、「農場の田畑で盗みをはたらき、侵害する場合は法的に処理する。厳重な場合は死刑に処すると記されている」と、協力者は伝える。今秋、金正恩政権が、食糧確保にいかに必死になっているかを示すものと言える。

北朝鮮も今夏は猛暑で不作だった。金正恩政権は、軍隊や政府機関向けの配給食糧が足りなくなる事態を恐れて、収穫が本格化する前から農場の生産物の確保に躍起になっていると見られる。逆に生産者の農民は、都市部への販売に制約を受け現金収入を減らすことになる。今年は農場員の困窮が深刻化しており、生産者であるのに食べ物にも事欠く「絶糧世帯」が増えている。今回の統制で困窮がさらに進む可能性がある。

参考記事:<写真報告>北朝鮮で最も貧しい農村の女性の姿(1) 生産者なのに収奪で困窮(5枚)

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「布告」は、鉄道駅など公共の場所に貼り出されるが、取材協力者が住んでいる地域では、9月15日の地域の会議で、担当保安員が直接口頭で通知したという。以下は協力者が伝えてきた「布告」の主な内容だ。()内は筆者。

主題 すべての住民は穀物を侵してはならない。

・決められた計りで計量せずに農場で(設定)キロ数を高めに設定し、(生産)トンをごまかし幹部が自分の利益を図ること。(幹部が不正に生産量を低く計算して、「余剰分」を横流しする行為のことだと思われる)

・国の穀物輸送証を使って個人の米を運ぶ行為をした場合は、動員した車は没収、運転手は免許証を剥奪する。

・ 農場の田畑で盗んだり、(収穫物を)侵したりした場合は法的に処罰する。厳重な場合死刑に処する。

・穀物で酒を密造して売ってはならない。

 

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