延吉市内の教会近くで野宿していた北朝鮮の子供たちと筆者(右端は中国朝鮮族の子供)。1999年8月撮影アジアプレス

 

◆体が小さい! 深刻な栄養失調の影響

子供たちに共通しているのはとにかく体が小さかったことだ。メジャーを買って数人の子供の背を測ったことがあるが、満145歳の男児で身長130140センチが普通で、13歳の男児で身長110センチという子供もいた。原因は、もちろん幼少時からの栄養不足にあることは明らかだ。80年代後半以降に北朝鮮に生まれた子供たちは、一世代が丸ごと禍(わざわい)に遭遇したといえるだろう。

子供たちは、当初は中国でお金を貯めて、北朝鮮に残る家族に持ち帰る計画を持っているのだが、市場に溢れる物を買ったり、ゲームセンターなどで遊んでお金を使い果たしてしまうケースが多い。

子供たちにとって中国での暮らしは相当楽しいようだ。おいしい食べ物はいくらでもあるし、テレビやビデオの娯楽番組は北朝鮮で見ることができないものばかりだ。なかには、貯めたお金で延辺地区から北京や瀋陽まで旅行してくる猛者もいた。

北朝鮮に戻ることを決心すると、貯めたお金を小さく折りたたみ、ビニール袋で薄く包んでライターで溶かして密閉する。錠剤のカプセルのようなものを作るのだ。そして渡河する直前に飲み込む。こうすれば、もし渡河した後に国境警備隊に見つかっても、お金を取られなくてすむ。お金は数日内に大便と一緒に出てくるという寸法だ。

中国の100元は、97年以降およそ2500朝鮮ウォンで交換できる。これで、ざっとトウモロコシなら80100キロ、白米なら3050キロ買えた。4人家族が23ヵ月生命を維持していけるのだ。

あまりに数が増えすぎたのだろう、子供の越境者・難民に対しても、2000年から警察の取り締まりが厳しくなり、2001年からは観光シーズンになっても姿を見かけることは少なくなった。

身寄りのない子供の養父母となって面倒を見る中国朝鮮族、集団生活をさせ勉強を教え地下教会も多い。学校の授業のある時間は外出させない、中国語を教えるなどして、警察に発覚しないよう注意を払っている。(続く20へ >>)

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