イスラエルにとって2018年は建国してから70年目になる。建国70年について、平和について、イスラエルの女性たちはどんな思いでいるのか。5人の女性に話を聞いた。第1回目は、ユダヤ教超正統派の家庭に生まれ育ったエヴァリンさん。「イスラエル人の国とパレスチナ人の国と共存する道を信じている」と話す。(エルサレムにて取材・古居みずえ・アジアプレス)
第1回:エヴァリンさん(ヘブライ大学学生 20代)
◆大学へ行って、考えが変わった
「アニメの映画、大好きです!アニメーション大好きです!」
日本語で話しかけてくれたのは、エルサレムに住むエヴァリンさん。今から10年前、インターネットで見つけたアニメーションがきっかけとなり、以来、とりことなったという。
当時はそれらのアニメが日本のものとは知らなかったが、大好きになり、ほとんどのアニメを見つくしたという。英語で見られるのもがなくなり、原作を検索していたら、それが日本語だとわかったという。そこで日本語版を最初から見ることに。
「アニメーションでは教科書みたいな日本語を話さない。なんてすばらしい言葉だろう。日本語を学びたい!」当時エヴァリンさんは18歳だった。
エヴァリンさんのユニークさはアニメ好きだけではない。もともと厳格なユダヤ教超正統派の家庭に生まれ、育った。エヴァリンさんはロシアで生まれ、両親と共に3歳の時にイスラエルにやって来た。6歳のときに両親は正統派となった。以来、彼女は人生のすべてを正統派の中で過ごしてきた。18歳の時にお見合いで結婚。その頃のエヴァリンさんはアニメに夢中だった。
「よし。日本語を学ぼう。大学で専攻しよう」と。
しかしエヴァリンさんは夫に「女性は大学にいくものではない」といわれ、大学への道が閉ざされた。どうしても勉強したかったエヴァリンさんは、自分でお金を工面し、テルアビブにあるアジアの語学学校に通った。大学に入るための試験もいくつか受け直し、エルサレムにあるヘブライ大学に入学した。
一方で離婚することになったエヴァリンさんは、のちに正統派をやめ、世俗派となった。それはあとで知り合った現在の夫のためだった。
エヴァリンさんは大学に通ったことで、多くの意味で考え方が変わったという。彼女は超正統派のコミュニティの中だけで人生を過ごし、結婚するまでは女性以外の人と話をしたことはなかったという。
エヴァリンさんは、
「初めて男性と話したのはお見合いの場です。世俗的なユダヤ人とアラブ人どころの話ではありません。彼らが身近にいることは知っていましたが、会ったことも話したこともありませんでした。禁止されていましたし、そうする理由がなかったからです」
という。エヴァリンさんは続ける。
「大学に入ったことで、いろいろなところから来た、異なった視点を持つ様々な人に出会うと、自分とは縁のない、遠い世界の人だと思っていた人が、実は自分と同じような問題を抱えた、同じ人間だと気づきます。例えば誰か助けが必要な時は、それがアラブ人か、キリスト教徒なんて関係ありません。私たちの間で違いなんてありません。隣人はアラブ人ですし、アラブ人の友人もいます」
今年の4月18日の日没から、19日の日没まで、イスラエルでは建国された日を記念して、記念行事があちらこちらで行われていた。エルサレムでも町のいたるところで、イベントが開かれ、人々は夜通し町を練り歩く。歌ったり踊ったりする人たちもいた。