◆イドリブでの日本人記者拘束について

モハメッド・スルーム氏:

イドリブで外国人が拘束されているというニュースは国外のメディアを通して知りました。しかし、現地でその存在を聞いたことはありません。日本人記者がシャム解放機構から分派したフッラース・アル・ディン(=宗教の守護者)という組織に拘束されていると報じられているとのことですが、彼らは少数ですが、シャム解放機構よりも過激な思想を持つ人たちと聞いています。解放にはトルコがなんらかの役割を果たせるかもしれません。

イドリブにいた頃のモハメッド・スルーム氏。ISに拉致されたのち、シャム解放機構(旧ヌスラ)に脅迫され、トルコに逃れた。弟2人は拘束されたまま。(写真・本人提供)

 

現在、フッラース・アル・ディンの支配地区の一部をシャム解放機構が奪還するなど組織間の攻防が続いています。またアサド政権もイドリブへの攻撃を本格化させると予想されるので、フッラース・アル・ディンはそれほど長続きしないと思います。

◇シリア内戦は、誰に責任があるのでしょうか

モハメッド・スルーム氏:

今の状況を引き起こした責任は、まずシリア政府、アサド大統領にあります。独裁政権で国民から自由を奪い、平和的な民主化デモの参加者も徹底的に弾圧し、流血に至りました。しかし、私たちシリア人にも責任があると思います。それぞれが武装組織をつくり殺し合い、大国がそれを利用しています。さらに各国から過激な人も入り込み、シリアがめちゃくちゃになりました。

イドリブで発行していたグルバール誌。モハメッド氏が編集長だった。社会文化がテーマの雑誌だが、記事の内容で武装組織に狙われた。(写真・本人提供)

 

2人の弟は拘束されたままです。両親や親戚は今もイドリブにいます。シリア政府軍がイドリブの攻撃をしているため、心配でなりません。しかし私は妻と3人の子どもたちを守らなければなりません。このままではシリアに未来はありません。以前の隣人たち、友人たちが互いに殺しあうことになってしまった今の状況を、本当に悲しく思います。

<シリア・イドリブ>安田さんだけではない あいつぐ拉致 (1)拘束された地元記者に聞く(写真4枚)

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