国営商店の前で祝日の特別配給に列を作る人々。2008年9月黄海北道にて シム・ウィチョン撮影(アジアプレス)

◆経済難でみるみる陳腐化した贈り物

だが、経済難によって1980年代からその質と量は低下の一途を辿ってきた。この数年は国産品の粗悪な歯磨きセット、食用油一本、生徒に菓子袋ひとつ、ズック靴一足といった程度のもので、それさえも出たり出なかったりだった。質の高い中国製品を市場で買って使うことに慣れた住民たちは、ありがたみも感じず、期待もしなくなっていた。

陳腐化、形骸化しても、金正恩政権が祝日の「特別配給」が続けてきたのは、「偉大な指導者による国民への配慮」が無くなることで、権威に傷がつくことを懸念しただめだろう。

ところが今年に入り、2月の金正日生誕日に貧弱な「贈り物」があったのを最後に、「特別配給」は取りやめになった模様だ。アジアプレスの調査では、少なくとも両江道、平安北道、咸鏡北道の数都市では、まったく実施されていない。

今回、調査に携わった取材協力者は次のように言う。
「一般住民への『祝日配給』は何もなし。お祝いの雰囲気も年々希薄なっている。自前で配給を準備しなければならない工場や企業でも、何も出せない所がほとんどだ。保安署(警察)と保衛局(秘密警察)では、資金を自己調達して食用油と砂糖を少し出ていた」

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