◆船舶では国際基準対応

20095月に採択され、日本も批准しているシップリサイクル条約では500トン以上のすべての船舶にあらかじめ船舶に存在する有害物質などの概算量と場所を記載した「インベントリ」を作成し、維持管理していくことが義務づけられている。

「これはアスベストのインベントリがあらかじめ作られていないと解体してはいけないという条約です。膨大な数の建築物についても、パラダイムの転換が考えられないか」(古谷氏)

そのうえで以下の9項目の制度化を提言した。

1)アスベストのない環境/社会の実現を目標に掲げ、達成目標時期とロードマップを持った体制を確立すること

2)建築物などの調査+リスク評価・管理を義務づけ、それがなされていないものの解体などは認められないという原則とすること。アスベストマップ/データベースなども検討する

3)上記のための資格制度を作るとともに、過去におこなわれた調査なども見直し、リスク評価・管理を徹底すること

4)除去作業にライセンス制度を導入すること

5)除去作業中のリスクアセスメントの実施(環境基準の設定も必要)およびその結果に基づく必要な措置の実施を義務づけること

6)除去作業が適切に完了したことの確認を義務づけること

7)いわゆる「レベル3」建材の除去についても届け出義務の対象にするとともに、法的規制を強化すること

8)罰則を大幅に厳しくするとともに、実際に適用すること

9)政策決定の透明化および適正化

古谷氏が指摘したシップリサイクル条約は日本とのかかわりが深い。じつはかねて「我が国は条約作成を主導」(同省資料)と環境省は胸を張っているのだ。使用中からあらかじめ調査、リスク評価し、管理するとの手法を船ではできて、建物でできない理由はないはずだ。船舶では国際基準に対応しながら、国内の建物では不要というのであれば国民の人権軽視もはなはだしい。

「真摯な議論がおこなわれることを期待します」と古谷氏は述べたが、その声は本当に国や委員に届いたのだろうか。

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