◆中国に屈辱的な「媚びへつらい」の数々 金正恩氏のの思惑は?
金正恩氏が訪中して習近平主席と四度目の首脳会談に臨んだ時の様子は中国国営テレビで放送されたが、そこには屈辱的な姿が映し出されていた。まるで先生の説話を聞くと生徒のように、金正恩氏は習氏の話をメモを取りながら傾聴していたのだ(北朝鮮の放送ではこの場面は一切カット)。
中国から帰国後の金正恩氏の中国への気の使いようは、「ゴマすり」「媚び」と言いたくなるほどだ。
例えば、2月3日付け労働新聞電子版に載った、各国から年賀状が送られてきたという記事。真っ先に中国主席を挙げ、続いて中国共産党の各機関の委員長、全国人民代表大会の各機関の委員までずらりと羅列した。韓国の連合通信によると、昨年までは4年連続でロシアからの年賀状を先に紹介していたという。
1月31日付けの朝鮮中央通信は、北朝鮮の芸術団の北京公演を習近平主席夫妻と中国政府高官が観覧したことを大々的に伝えたが、それに関連して、2月1日の朝鮮中央テレビは、芸術団の中国公演前に、金正恩氏が駐平壌の中国大使をリハーサルに招いて、公演内容について討議したと伝えている。習近平主席に見せる公演の中身を事前に中国大使と相談するというのも迎合的だが、それをわざわざ公開するというのは、中国政府への「ゴマすり」以外に何の目的がありえようか。
金正恩政権の露骨ともいえる媚びへつらいの動機は何だろうか? 2月末に予定されているトランプ米大統領との首脳会談を前にして、「今や中国は我が方に立っている」という蜜月を対外的に強くアピールしたいという目的があるのはもちろんだろう。
だが、対内的な動機にも目を向ける必要がある。今、北朝鮮経済は国際社会の制裁によって日々悪化の一途を辿っている。一般住民のみならず平壌の幹部や富裕層の間でも苦境が広がっており、不満と不安が増している。
強力な制裁の中心を担っているのは、貿易の九割を握る中国だ。金正恩政権としては、中国との関係が良好になったので制裁は間もなく緩和に向かうというムードを作って不満のガス抜きをしたい。また、政権自ら煽った反中感情を鎮めなければまずい。そんな政権の思惑が過剰な「ゴマすり」から見て取れるのである。