北京を訪れた金正恩氏を迎接した習近平主席。2019年1月中国中央電視体台より引用。

◆「中国は1000年の敵」と言っていたのに

北朝鮮当局が、1月中旬以降、一般住民向けの人民班会議で中国非難をしないよう指示していることが分かった。北部地域に住む複数の取材協力者が伝えてきた。(カン・ジウォン)

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金正恩氏は、自身の誕生日である18日に中国を訪問した。その訪中の直前、北朝鮮当局は「ヤンベル」と呼ばれている中国産ソーセージの食用と販売を禁じる措置を、人民班を通じて指示していた。

「平城(ピョンソン)市などで、「ヤンべル」を食べた子供が死亡する事故があったとして、輸入を止めるとともに、住民には食べたり販売したりしないように指示が出された」と、

咸鏡北道(ハムギョンプクド)の取材協力者は説明する。

「ヤンベル」は一本が2中国元(約32円)ほどで売られている人気肉製品だ。本当に死亡事後があったのか不明だが、北朝鮮で中国食品の評判が芳しくないのは事実である。購買力が低く加工食品の種類に乏しい北朝鮮には、20年程前から、廉価低質の中国食品が大量に輸入されてきた。しかし、中国でも相手にされないような粗悪品が少なくなく、信用が落ちていた。

「ヤンベル」の流通が禁じられて間もない1月中旬、人民班会議で真逆の指示が出され始めた。中国の食品は不良品だという流言飛語を流布させてはならない、中国のことをあれこれ悪く言ってはならないという内容だったとして、取材協力者は次のように言う。

「つい少し前まで、中国のことを『大国のくせに米国に追従して経済封鎖している』とか、『中国に対して何の幻想も持ってはならない』と、当局が悪し様に非難していたんですよ。いったい、この変わりようは何なのか? 中国に対する態度を改めよというのだから、関係が良くなったということなんでしょうけれど」

外部世界には朝中間の表面的な対立や不和が見えなくとも、「日本が100年の敵なら中国は1000年の敵だ」という表現が、住民対象の学習会などでしばしば使われなど、北朝鮮の当局の中国への警戒心は根深いものがある。

一般住民の対中感情も、とてもいいとは言えない。「自分の欲しか考えない奴ら」「北朝鮮に来る中国人貿易商、観光客は貧乏人ばかりだ」、「我は国が貧しいから、仕方なく付き合ってやっているのだ」というような、「嫌中」発言は珍しくない。

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