さらに煙突のアスベスト除去工事で使用されるウォータージェット工法(超高圧水で削り取る工法)の理想としては「骨材まで露出」させるべきだとし、「せめて煙突内でコンクリートの肌が全部露出するような工事が望ましい」と今回の工事が適切でなかったと示した。

煙突と横引き煙道の隙間に残ったアスベストを示す報告書写真には「総じればこぶし大にもなる」塊があったことが記載

 

報告書に添付された写真には横引き煙道内に点々とアスベストが付着しているようすや「小指大」の「あきらかに繊維束」とわかる残存物、「総じればコブシ大にもなる」塊があったと記載されている。

煙突内で採取した試料は「肉眼でもアモサイトと判別可能」だったほどだ。

こうした状況をふまえて、同協会は結論として、再び「横引き煙道の接続部位の小片や小塊の取り残し、煙突内側の筋状(縞状)の取り残し等があることから、細部の施工状況は“粗い仕事”であると判断される」との見解を示した。

当初市が「残存はない」と言い続けた2017年3~4月の除去工事は、「総じればコブシ大にもなる」塊から「小指大」あるいは肉眼でかろうじて判別できる微少なものまでさまざまなアスベストが残存するずさん工事だったことが専門家団体によって改めて裏付けられたわけだ。

煙突内で採取したアスベストの残存物の試料。「肉眼でもアモサイトと判別可能」だったという

 

報告書をふまえた市の見解はどうか。

市建築監理課の山下直史課長は「報告書の結論で書かれているとおり、細部の施工状況は粗い仕事と判断される、その通りと思ってます。除去工事が適切だったとの評価にはならないとの件も協会の見解の通りです」という。

工事が不適正だったとの理解でよいかと確認すると「一足飛びにそうはならない」と山下課長は否定する。

では適正だったのかと聞くと「細部の施工状況は“粗い仕事”であると判断される」「適切だったとの評価にはならない」(山下課長)と繰り返す。

煙突内や横引き煙道にアスベストの小片・小塊が散乱する「粗い工事」であるとの結論である以上、不適正な工事だったのではないか。

だが、市の見解は「直接結びつかない」(同)とあいまいだ。

不適正でないとすれば、市はアスベストの除去工事を発注する際、現場に適当に残して報告もしないで構わないとの契約でもしているのだろうか。あるいは今後現場の解体工事の際にどうするのか。アスベストの再除去なしに解体するとでもいうのか。

★新着記事