複数の取材協力者によれば、12日時点で、会談から10日以上経っているのに、地域の人民班会議は開かれず、各組織の会議でも朝米会談の結果に対する説明がないという。
※人民班は最末端の行政組織。

にもかかわらず、非核化協議破談の原因は米国トランプにあるという情報だけが駆け巡っているというわけだ。前出の咸鏡北道の協力者は次のように言う。

「私は、あなたたち(アジアプレス)が知らせてくれているので、会談決裂の経緯について知っているが、ほとんどの人には何も知らされていない。それなのに、米国が約束を守らなかったからだとか、トランプ政権の構造についてまで話が出て来るのはおかしい。当局が意図的に流布させているのだと思う」

また別の協力者は、「協議決裂の責任をトランプのせいにしようという政治的な宣伝手法だろう」と述べた。

トランプ氏との会談のため、金正恩氏がベトナムに向けて列車で平壌を出発する姿を、朝鮮中央テレビなど、国営メディアは大々的に報じていた。だが、多くの国民が期待していた制裁解除は霧散し、金正恩氏は手ぶらで帰国。「協議失敗」を国民にどう説明するか、北朝鮮政府は悩んでいることだろう。(カン・ジウォン)

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

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