娘のバロズさん(19)は、ある日、見知らぬ人から携帯電話にSNSメッセージを受け取った。
「誤解しないで、私たちは東グータから強制的に移住させられたの」。
自分の家に入り込んで住み始めた女性らしき人物が、バロズさんの部屋から連絡先を手に入れ、送ってきたようだった。しかしバロズさんは到底許すことはできなかった。すぐに受信拒否にして削除したという。
東グータから逃れた住民に私は連絡を取り、アフリンへ移った人はいないか聞いた。しかし、誰も知らないとのことだった。敢えて答えなかったのかも知れない。
現在、アフリン住民の多くが脱出、お年寄りなど少数が残る。しかし電話やSNSで連絡を取り合うのは容易ではないという。トルコの情報機関に盗聴されているという噂が広まり、住民たちが話すのを恐れたからだ。
戦争は被害者と加害者を容易に分けることはできず、すべての人びとを巻き込んでいく。
<シリア>息子3人が戦死 「遺体なき棺を埋めた」クルド母の涙
(※本稿は毎日新聞大阪版の連載「漆黒を照らす」2019年02月05日付記事に加筆修正したものです)
合わせて読みたい記事