◆輸出産業は大打撃
恵山市では、道保安局(警察)の「312常務」という組織が浮浪児対策を担当している。協力者によれば、恵山市で増えている浮浪児も市外から来ている子供が大半で、保安員(警官)はコチェビを捕まえると、孤児院ではなく、「集結所」に送っているという。だが、「集結所」では食べ物をろくに与えられないため、すぐに逃げ出してくるのだという。
※「集結所」は他地域から来た秩序違反者を収容する施設。
「昔のように飢えて死んだ子供は見ていない。可愛そうだからと手を差し伸べる人は少なく、そのためコチェビたちは、市場で物乞いするのではなく、食べ物を盗んだり、人が食べているグクス(ソバ)の器に手を突っ込んだりしている」という。
茂山郡の場合も、浮浪児は、もともと保安署(警察署)が家族関係などを確認して養育責任を取らせてきたのだが、他地域から来た子供たちに関しては、「集結所」に収容するだけなのが実情だという。
浮浪児が現れるのは、言うまでもなく養育すべき親に問題が発生したためである。経済的に困窮の極みに達し、最後に家を売って家族が離散したり、親が亡くなったりしたケースが推測される。国際社会の経済制裁によって、石炭や鉄鉱などの輸出産業は大打撃を受けており、平壌の特権層や富裕層には没落する者が出ている。お金の循環が悪くなって国内の景気は日々悪化しており、庶民層も商行為の不振で家計破たんが増えているものと想像される。
金正恩氏は浮浪児対策に力を入れ、平壌をはじめとして各地に孤児院を建設。市場や駅前を徘徊する子供たちの「刈り込み」を繰り返して施設に送ってきた。また孤児院の食生活も改善され、この3年ほどは、全国的に浮浪児はほとんど姿を消していた。
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