◆ハノイ会談決裂後から取り締まり強化
北朝鮮と約1400キロの国境線を持つ中国が、密輸の取り締まりを本格化させている。2月末にベトナム・ハノイで行われた朝米首脳会談が物別れに終わり、国際社会の制裁基調が続くことになって以降のことだ。国連安保理の経済制裁の「穴」を提供していると度々批判されてきた中国だが、密輸については厳格な取り締まりに乗りだした。 (カン・ジウォン/石丸次郎)
北朝鮮にとって中国は貿易の9割を依存する最大の経済パートナーであり友好国だ。その中国が国連安保理の経済制裁に賛成したことで、北朝鮮経済は大打撃を受けている。昨年の対中貿易は、2017年度比で輸出がマイナス88%、輸入がマイナス32%を記録した。
石炭や鉄鉱石、委託加工の繊維製品、海産物など主力輸出品がすべて禁輸となり、外貨収入が大打撃を受けた他、石油製品の大幅な輸入制限、自動車や機械、鉄鋼などの輸入も禁じられ、国内の生産活動や運輸、建設に大きな支障が出ている。
厳しい制裁環境の中で、金正恩政権は密貿易を活性化させることに活路を見出そうとしてきた。黄海上での「瀬取り」と、中国との国境河川の鴨緑江が主舞台だ。密輸を実行するのは当局が選んだ貿易会社だ。そのため北朝鮮では「国家密輸」と呼ばれている。中国側は密輸業者が担ってきた。
2018年以降、密輸の最大拠点となっていたのは、鴨緑江上流の吉林省長白県付近である。川幅が狭く、北朝鮮側に両江道の恵山(ヘサン)市という交通の要衝があるためだ。鴨緑江河口の丹東―新義州(シニジュ)付近は船を使った密輸が盛んだったが、中国当局が厳しく監視するようになり、昨年から一気に低調になった。
「北朝鮮の国家密輸は、鴨緑江上流に集中するようになった。長白県付近の密輸ポイントには毎晩、朝中の300人程度が集まり、自動車、バス、コンテナが行き交う活況を呈している」
吉林省に住むアジアプレスの取材協力者は、川が凍結した昨年末に現地を訪れ、このように報告している。中国からは主に鉄鋼材、セメント、自動車とタイヤなどの関連品などが大々的な北朝鮮に運ばれていた。