■反日攻撃が「菊タブー」を作った

1947年に不敬罪が廃され、新憲法下で制度として言論の自由が保障されているのに、わが国には、いまだ「菊タブー」、つまり天皇制を自由に表現できない現実がある。反日というレッテルを張っての攻撃、脅しが言論機関を震え上がらせてきたのだ。

天皇や皇族の扱い方を巡っては、記事や小説、映画、政治家の発言が度々攻撃にさらされ、時に殺傷事件まで発生した。関西では、32年前の5月3日に朝日新聞阪神支局が襲撃される事件が起こった。「反日分子の処刑」を訴える「赤報隊」に猟銃で撃たれ、小尻知博記者が殺害された。

報道に対する卑劣なテロなのだが、この「赤報隊」の人殺しを、正面から「義挙」だと肯定する街宣が、数年前から、5月3日に合わせて関西と東京で行われるようになった。まだ勢力は小さいが、自由な言論活動への、新たであからさまな挑戦が始まったようで、胸騒ぎが収まらない。

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テロ事件があった5月3日には、毎年、朝日新聞阪神支局に大勢の市民が小尻さん追悼に訪れる。2017年5月3日撮影石丸次郎
同じ日、朝日新聞阪神支局前で「赤報隊テロは義挙」と演説をする二人。この後カウンターに取り囲まれた。2017年5月3日撮影石丸次郎

新しい「菊タブー」を作らせてはいけない。いや、減らしていかなければいけない。そのためには、日頃の表現によって自由にものが言えるスペースを広げていくことが大切だ。代が替わった天皇への敬語使用のありようを見て、そう考えた。

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