琉球人の遺骨返還を求める初めての訴訟が京都地裁で始まっている。旧京都帝大の人類学者が1929年、沖縄県今帰仁村にある「百按司墓(むむじゃなばか)」から遺骨を持ち出した問題で、子孫ら5人が遺骨を保管する京都大学に返還と損害賠償を求めているもので、京都大側は全面的に争う姿勢を示している。 (新聞うずみ火・栗原佳子)
◆琉球王朝の子孫らが訴え
「百按司墓」は琉球式の風葬墓で、今帰仁城(ぐすく)に拠点を置いた琉球統一前の北山王国時代や、統一王朝を建てた第一尚氏時代の貴族らを葬ったとされる。原告は第一尚氏の子孫の玉城毅さん、亀谷正子さんの2人と、照屋寛徳衆院議員、沖縄出身で琉球民族遺骨返還研究会代表の松島泰勝・龍谷大教授、彫刻家の金城実さんの合わせて5人。
訴状などによると京都帝大助教授だった金関丈夫氏(故人)は子孫や地域住民の了解を得ず、百按司墓から遺骨を持ち出し、26体を「人骨標本」として京都帝大に保管。原告は京都大に返還や情報開示を求めてきたが拒否され、昨年12月、提訴した。
原告側は、第一尚氏の子孫は墓の所有権を有する民法上の「祭祀承継者」と主張、沖縄出身の3人の原告とともに所有権、憲法に基づく民族的、宗教的自己決定権があり、それらを侵害する京都大の対応は違法だとしている。
原告団長の松島教授は、「琉球民族は遺骨を親族の墓で埋葬し、先祖供養の儀礼で祖霊と交流して先祖と子孫との絆を強めてきた。琉球民族にとって遺骨は先祖のマブイ(霊魂)が宿るもの。遺骨そのものが『骨神(ふにしん』として崇拝の対象とされている。博物館の冷たい棚に置かれ、DNA調査で破壊される恐れがあるご先祖の遺骨を我々のやり方で再風葬してマブイ(霊魂)を供養したい。子孫としての義務であり権利」だと訴える。