この町の人口は公表されていても、西サハラの民サハラーウィの数や、モロッコからの入植者の数などの内訳は記されていない。
サハラーウィとモロッコ人を外見から見分けることは、不可能に近い。エルアイウンの町を歩けば、町の賑わいを観察することはできる。しかし、通りですれ違う人たちのなかにいるはずの、サハラーウィに気づくことは難しい。あなたはモロッコ人なのかサハラーウィなのか、ここでなにを想うのかと聞き重ねていれば、早晩、あの「ニタっと笑う男」のような者に嗅ぎつかれてしまう。
エルアイウンで強制退去させられた人権団体やジャーナリストは後を絶たない。西サハラ最大都市エルアイウンは、サハラーウィの声と足音が、最も聞こえにくい町でもある。(つづく)
【岩崎有一】
ジャーナリスト。1995年以来、アフリカ27カ国を取材。アフリカの人々の日常と声を、社会・政治的背景とともに伝えている。近年のテーマは「マリ北部紛争と北西アフリカへの影響」「南アが向き合う多様性」「マラウイの食糧事情」「西サハラ問題」など。アジアプレス所属。武蔵大学社会学部メディア社会学科非常勤講師。
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