<現地報告>アフリカ最後の植民地・西サハラを行く(1)プロローグ 15年ぶりに訪れた現地は大変化
一面の砂景色からは想像しにくいが、西サハラには現在、約50万の人々がいる。1975年の「緑の行進」と呼ばれるモロッコ人の入植開始以降、西サハラの民サハラーウィとモロッコ人が、同じ町の中で暮らしてきた。それぞれの町に、それぞれに異なる町の特徴がある。本連載前半では、西サハラを構成する主要な町の様子を報告する。
◆通勤客で混み合う砂上のビジネス街
真っ直ぐに伸びるアスファルトの路面は、ところどころ、押し寄せた砂に埋もれている。
「ようこそ。サハラの滞在を楽しんで。ノープロブレム」
砂漠に囲まれた検問所のモロッコ憲兵は、陽気な声でこう話し、こちらにパスポートを戻した。検問所の先にある巨大なアーチをくぐると、水の匂いが濃厚に香ってくる。
信号のある交差点をいくつも通り過ぎながら、住宅街を抜けて中心部へと進む。ホテルと、背の高いビルが並んでいる。通り沿いには、テーブルと椅子をぎっしりと並べたカフェテリアが続き、ノスノスと呼ばれるモロッコのカフェオレや、お茶を楽しむ人々で賑わっていた。
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円形交差点には大きな噴水が設けられ、吹き出る水の音が途切れることはない。大通りの両側や中央分離帯に掲げられた真っ赤なモロッコ国旗もまた、途切れることなく並び、はためいている。西サハラ最大の都市、エルアイウンに入った。
西サハラを占領しているモロッコは、西サハラ全体を南北二つの地区に分けて、自国の行政区分に取り込んでいる。エルアイウンは、その北側の中心を担う町であり、約21万(モロッコ国勢調査 2014)の人口を抱えている。
壮麗な会議場がそびえる町の中心部は、官庁街とビジネス街を合わせた様相だ。メイン通り沿いには、銀行をはじめ様々なモロッコ企業の“エルアイウン支店”が並ぶ。高級ホテルやレストラン前の車寄せには、高級車がずらり。道を歩く人々は、スーツ姿だったり、アイロンがきっちりとあてられた民族衣装だったりと、小綺麗な出で立ちをした人が多い。
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エルアイウンは、8kmにわたって町を斜めに走る“国道”5号線を中心に、複数の市街区からなる町だ。それぞれの市街区は、学校や病院、市場と商店街、モスク、そして住宅街によって構成されている。循環バスが中心部と各市街区を結び、昼も夜も住人を運び続ける。流しの乗合タクシーも、途切れることがない。朝夕の通勤通学ラッシュ時には、車内も道も混雑していた。
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