◆きっかけは「3年前」
大通りを進むと、整地された広大な空き地がいくつも目につく。空き地の囲いには、宅地造成をアピールする広告が貼り付けられていた。今も、町は拡張を続けている。モロッコからの移住者は、後をたたない。
市街地で飲食店を営む男性に、エルアイウンに住んで長いのかと、聞いてみた。
「3年前にアガディールから来ました。アガディールでも同じような店を営んでいました。ここは人が増えていると聞いたので、商売がしやすいかなと思いまして。」
真新しさを感じるホテルの受付に座る女性にも、同じ質問をした。
「3年前に、父がこのホテルの経営を始めることに伴い、エルアイウンに引っ越して来ました。」
カフェで隣り合わせた男性に、お仕事ですか、と話を向けてみる。
「ええ、物流の仕事で来ています。首都ラバトとここを行ったり来たりの生活を、もう何年も続けています。エルアイウンは、ずいぶんと変わりました。」
飲食店の男性とホテルの女性が「3年前」にエルアイウンへやってきたのは、偶然の一致ではない。このときから3年前となる2015年、モロッコは風力発電と太陽光発電の大規模な施設建設を始めた。それを機に、エルアイウンは急激に忙しい町へと変わりつつある。
長く続くビジネスもある。南に100km進んだ先にある、ブー・クラーアのリン鉱石採掘場は、世界第二の採掘量を誇る。海に向かって真っ直ぐに伸びるベルトコンベアで運ばれたリン鉱石は、エルアイウン近くのマルサ港から、船に積み出されてきた。
また、豊富な水産物がとれる大西洋に面した、エルアイウン港も稼働を続けている。砂丘に囲まれたエルアイウンに、商機を求めて、人々が集まっている。(つづく)
岩崎有一
ジャーナリスト。1995年以来、アフリカ27カ国を取材。アフリカの人々の日常と声を、社会・政治的背景とともに伝えている。近年のテーマは「マリ北部紛争と北西アフリカへの影響」「南アが向き合う多様性」「マラウイの食糧事情」「西サハラ問題」など。アジアプレス所属。武蔵大学社会学部メディア社会学科非常勤講師。
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