◆説明会でも排除にダメ出し
じつはこの発言には続きがある。
「それ(誠意ある対応)をしなきゃいけないのに、ジャーナリストを締め出したりするから、余計に疑われるんですよ。そこをもっと人間としてしっかり考えないと(この問題は)終わらないですよ。このままでは税金の垂れ流し」
当日説明会から排除され廊下にいたことから筆者のことに触れているが、何も筆者のことだけを指摘したわけではない。今回の市民以外を排除する市の対応ぶりを批判したものである。
当日出席して「工事の一時停止」だけを謝罪した市企画財政部の工藤恵司部長に対し、前出・今井さんが「いままでの経緯聞かれていかがですか。守口市としてどうなのか」と聞いた。
工藤部長は「今回のことに関しまして、健康被害は絶対に生じさせない。適正にする。情報の共有をする」と回答。市の対応ぶりには答えず、話を逸らした。
再調査により、違法工事の疑いが濃厚で、アスベストが飛散した可能性のある作業が明らかになっているのだが、そのことをきちんと説明もせずよくいったものである。「誠意のない」対応ぶりといわれた直後にさえこの回答なのだから情けない。
市によれば、説明会への出席は拒否しても「個別に対応する」ため差別や排除に当たらないと主張した。
だが、説明会では再調査を担った団体や施工業者らが出席しており、情報量がまったく違う。そもそも市では技術的な事項など説明できないため、説明会を開催した経緯がある。当然ながら、市が個別に対応するだけでは十分な説明などできないだろう。
説明会前日に担当課から話を聞いた服部浩之市議は、「市民以外は改めて説明するといっても2度手間、3度手間になる。全員が参加できるオープンな場で公式見解出すほうが早く終わるといったんですが、(市に)その気がないようですね。問題なく終わらせたいということの1点張りでした」とため息をついた。
説明会前日の5月14日、市側は市民以外の出席拒否は「市のルールで決まった」などと説明した。しかし、市民以外を排除する決定が、市のどの部局でいつ出されたものなのかは回答しなかった。「市のルール」と何度も繰り返していたが、実際には明文化されたルールすらないと認めた。
しかも市外の人びとが出席しても不都合は「まったくない」と市は明言していた。にもかかわらず、なぜそこまで排除にこだわるのか。
◆開催通知の配布を限定
市に対して技術的な助言などをしてきたアスベストセンターや家族の会を排除することにメリットはない。情報の遮断も不可能である。となると、担当する財産活用課だけでそこまで徹底した排除をすることは正直考えにくい。
そう考えると、市幹部の関与を疑わざるを得ない。ぜひ市議会などで詳細に説明していただきたいものである。
もう一点、指摘しておきたいことがある。
これまでの説明会ではせいぜい10人程度の出席しかなかったにもかかわらず、今回の説明会には30人近くが出席した。これはなぜか。
市が説明会の開催案内を配布している範囲は旧庁舎に直接面した住宅だけ。そのため、一軒となりでも説明会の開催を知らせていないという。
かねて住民から開催案内の配布範囲を拡大してほしいと要望が出されてきたが、市は無視し続けている。それなのになぜ出席者が増えたのかというと、近隣住民数人が開催を知らせて回ったためである。
そもそも市はウェブサイトやSNSでも説明会の開催を公表しなかった。となりの守口駅どころか現場にさえ開催のお知らせは掲示されていなかった。つまり、広く周知するつもりなど最初からなかったといわざるを得ない。これでは市外からの通勤・通学者などは説明会について知りようがない。
説明会後、前出・今井さんは「市はいままでも市外の人を入れるべきじゃなかったといったが、あのままでは何もわからずアスベストを飛散させる解体工事になっていたはず。今回の再調査でアスベストの見落としがたくさんあったことがわかった。専門性のある人を市外というだけで排除する愚かさをつくづく感じました」と語った。
今回の説明会に市民から出席を要請されていた「家族の会」の古川和子さんはこう指摘する。
「アスベストは大気中に飛散するものだから、現場の近くを通る通勤・通学の人たちもみんなリスクがある。市民以外は説明会に出席できないというのはおかしい。私たちはこの間、看板設置や調査の問題はじめ、様々な問題点を指摘してきた。その結果、調査し直したりして、住民の曝露リスクが少しは減ったかもしれないのだから、行政は感謝してしかるべきですよ」
古川さんは続けてこう訴える。
「差別ではないというのなら、市は市外からの通勤・通学者や説明会のことを知らなかったり、何らかの都合でこられなかった人たちも含め、市内・市外の差別なく、改めて同じ事業者らによる説明会を開催すべきです」
差別的対応について市にコメントを求めると、財産活用課は「5月15日に開催した説明会は、近隣住民を対象にご案内したものです。ご関心のある方には個別に対応しております」と回答した。
「自由と基本的人権を守る宣言都市」「環境宣言都市」の名に恥じぬ対応が守口市に求められている。