舞台は19世紀終わりの清朝末の時代。絶対王朝が不正腐敗の極みに達し、辛亥革命に向かう過程を描いたものだ。韓国語字幕で放送された。これが何らかのルートで北朝鮮に密かに流入し、地下で複写、販売されて拡散したものと見られる。
「これまでは、中国ドラマの視聴は摘発されても賄賂を少し出せば目をつぶってくれたが、『花咲くあの年の月光』については、韓国ドラマ並みの厳しい取り締まりをしている。8月初めから、『109常務』が昼夜問わずに民家を不意打ち訪れて検閲している。テレビ、ノートテル、パソコン、携帯電話機まで調べている」
情報を伝えてきた協力者はこう説明する。ノートテルとは、小型のノートブックパソコン程の大きさの動画再生機のことだ。
金正恩政権は、ドラマや映画を中心に、韓国情報の流入に神経を尖らせており、視聴して摘発されると1年未満の短期強制労働、販売流通させた者は2~3年の教化刑(懲役刑)になるのが当たり前になっている。「花咲くあの年の月光」に対しても同程度の厳罰が科されるものと見られる。
5月末以降、地方都市では電力事情が少し好転し、北部地域では、現在1日に4~6時間程度、電気が供給されている。それに伴い、家でこっそり外国ドラマを視聴する人が増えているという。
※追記 今年に入り、民主化闘争をテーマにした韓国の大ヒット映画「タクシー運転手」が若者の間で密かに拡散、金正恩政権は大々的な捜査に乗り出し、多くの逮捕者が出ている。
今回の「花咲くあの年の月光」や、韓国ドラマ・映画は、USBやSDカードで中国から搬入されていると見られる。北朝鮮内に情報流入を目指す活動家によるものと、純粋に金儲け目的で密輸入している北国内のグループのルートがあると見られる。
※アジアプレスでは中国携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。