◆西サハラ問題はタブーではない
RASDのガリ大統領は、数々の非礼を前にしても席を立つことなく、TICAD7の本会議中の日本滞在を貫いた。TICAD会場では、サーレク外相とバーリAU大使が日本人と会話する姿が何度も見られた。RASD代表団のTICAD参加によって私たちが西サハラに気づく機会を得たことの、意義は大きい。
主権回復だけでなく、モロッコによる資源の奪取、拷問や弾圧など、西サハラは多くの問題を抱えている。西サハラを考えるうえで、日本における最大の問題は、あまりに知られていないことにある。遠い地の遠い問題とされ、繊細な話題として西サハラを遠ざけてきたのはこちら側だ。
非礼に憤りながらも、西サハラの代表団はこの問題と西サハラの民サハラーウィの存在の周知に身をもって努めていた。西サハラ問題に触れたっていいのだと気づかせてくれた。そんな西サハラ代表団の初来日だった。
これまでの開催ペースに基づけば、次回の日本でのTICAD開催は6年後となる。2025年に、再び、より多くのサハラーウィの声を聞きたい。(終わり)
岩崎有一
ジャーナリスト。1995年以来、アフリカ27カ国を取材。アフリカの人々の日常と声を、社会・政治的背景とともに伝えている。近年のテーマは「マリ北部紛争と北西アフリカへの影響」「南アが向き合う多様性」「マラウイの食糧事情」「西サハラ問題」など。アジアプレス所属。武蔵大学社会学部メディア社会学科非常勤講師。
HP: https://iwachon.jp
facebook: iwasaki.yuichi.7
twitter: @iwachon
instagram: iwasaki_yuichi
合わせて読みたい記事
- <アフリカ開発会議>最後の植民地・西サハラの代表団が来日(1)見えないこととされる55番目の国 岩崎有一 (2019-08-29 11:20:13)
- <現地報告>アフリカ最後の植民地・西サハラを行く(1)プロローグ 15年ぶりに訪れた現地は大変化 岩崎有一 (2019-03-01 10:31:29)
- <現地報告>アフリカ最後の植民地・西サハラを行く(2) モロッコ侵攻に始まった西サハラ問題 岩崎有一 (2019-05-24 19:25:30)
- <現地報告>アフリカ最後の植民地・西サハラを行く(3)砂に囲まれた最大都市エルアイウンに入る (2019-06-13 19:32:02)
- <現地報告>アフリカ最後の植民地・西サハラを行く(4) 監視される町 エルアイウン 岩崎有一 (2019-06-17 14:35:38)