空気中のアスベストを測定するようす。2012年 井部正之撮影

環境省は8月22日、旧製造工場や破砕施設など「発生源」周辺で空気1リットルあたり1本超を検出したとの2018年度における大気中のアスベスト調査結果を公表した。ただし、住宅地域など「発生源」ではない場所では全国的に同1本以下の低濃度だった。(井部正之/アジアプレス)

◆ノザワ工場でまた検出

同省は2005年度以降、全国各地で大気中のアスベスト濃度を測定し、その結果を公表している。2018年度は全国50地点で測定し、「多くの地点において、アスベスト以外の繊維を含む総繊維数濃度について特に高い濃度は見られませんでした」と発表している。とくに住宅地域は平均で同0.26本と「ほとんど検出されない」レベルの低さとなっている。

ただし、以前アスベスト製品を製造していた工場や解体現場などで一部「比較的高い濃度が見られた」として指導しており、相変わらず飛散が続いている。

測定は2005年度から継続調査している全国32地点のほか、自治体から推薦のあった10地点、熊本地震後の建物解体などが続く熊本県内8地点の計50地点。

試料の採取および分析は同省の「アスベストモニタリングマニュアル(第4.1版)」(2017年7月)に基づいて実施している。同マニュアルでは作業区画や敷地の境界で(アスベスト以外の繊維も含む)総繊維数濃度が空気1リットルあたり1本を超えた場合、電子顕微鏡などでアスベストを同定。指導などをおこなう。なお、解体現場以外は基本的に3日間測定した平均値となっている。

すでに述べたように、基本的にアスベストが発生しないとみられる住宅地域や商工業地域、農業地域、内陸山間地域、離島地域といった「バックグラウンド地域」では、調査を実施した20地点で総繊維数濃度が空気1リットルあたり1本を超過したところはなかった。

一方、アスベスト発生源周辺での測定では、ノザワのフラノ工場(旧北海道工場)周辺では2018年10月および今年2月にそれぞれ3日連続で12カ所を測定。2018年10月測定では1カ所で最大同1.3本検出した。ただし、3回平均では同0.54本となり、1本超扱いとなっていない。また、今年2月測定では測定した12カ所のうち、4カ所で計7回にわたって1本超。とくに測定ポイントは示されていないが、そのうち1カ所では毎回1本超で最大で同2.4本(3回平均:同1.9本)検出した。

電子顕微鏡(A-SEM)で調べたところ、1本超だった7カ所すべてでクリソタイル(白石綿)を検出。今年2月調査の5カ所で1本超(1.1~1.8本)だった。

また熊本県の廃棄物破砕施設2地点でそれぞれ周辺で総繊維濃度が1本超だった。1地点では2カ所で1本を微量に超えた(各1.2本)だけだが、別の施設では2018年4月および同11月の測定で、5カ所の測定ポイントのうち、4カ所で1本を超えていた。2018年4月および同11月に5カ所で各6回測定を実施しているわけだが、その半数以上の17回で超過。最大で同17本(3回平均:3.5本)である。3回平均の最大値で同4.7本だった場所もあった。

電子顕微鏡でも11回1本超で、最大で5.3本の「その他石綿」を検出。資料には具体的に記載はないが、同省大気環境課によれば、トレモライト/アクチノライトという。

◆大防法で「指導権限なし」

ノザワの工場については、以前から何度も冬場に1本超の数値を検出している。

同省が確認したところ、同社側の測定ではアスベストを検出していないという。だが、現場は富良野市で、雪の多い2月に同1本を超過している。工場以外の発生源は考えにくい。調査結果について報告した同省・アスベスト大気濃度調査検討会でも工場からの飛散を指摘する声が上がっている。

対応状況を聞くと、同省は「事業所に結果は伝えてある。事業者の協力を得ながら原因究明と対策につなげる」と従来からの回答を繰り返す。

高濃度というほどではないが、毎回検出されるというのはそれなりのアスベスト発生源である。しかし、じつは法的な対応が不可能なのだ。

同省大気環境課は「法に基づくものがない。指導権限がない。大気汚染防止法(大防法)に基づいて対応というのは厳しい。できない状況ですね」と認める。

大防法ではアスベスト製品を扱う「特定施設」であれば、事業者は届け出しなければならず、現場の管理義務なども生じる。あるいは改修・解体などで「特定粉じん」除去作業もしくはその疑いがある場合は都道府県などに立ち入りや指導の権限がある。

ところが、0.1%を超えるアスベストの使用・製造などが禁止されているため、すでに特定施設は存在しない。また、とくに改修・解体作業もない。その場合、今回のように工場しかアスベストの飛散原因が考えられない場合においても、大防法の規制権限の対象外となってしまい、工場などへの立ち入り調査権限などが存在しないのである。

よって、あくまで法の枠外となり、原因究明も報告徴収できちんと回答させることもできず、事業者の「協力」なしに何もできないことになる。そのため、きちんと対応せずのらりくらりと誤魔化すことができてしまう。
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