◆累計では4割超で漏えい
さらに驚くべきは、毎年度の同省発表資料から解体現場を抜き出してその飛散状況を計算したところ、2010~2018年度の累計で計68地点の除去現場のうち28地点でアスベストが同1本超えて外部に漏えいしていたのだ。漏えい率はじつに41.2%と4割超である。
冒頭のグラフに示したように、年度ごとでみると、調査件数が数件程度と少ないことから漏えい率が0%から100%まで大きく上下しているが、累計漏えい率はおおよそ4~5割を推移している。
また同省は9月2日、大気汚染防止法(大防法)のアスベスト規制強化を検討している中央環境審議会・石綿飛散防止小委員会(委員長:大塚直・早稲田大学大学院法務研究科教授)で2014~2017年度の4年間に指導・監督権限を有する都道府県などによる調査で計66カ所の除去工事でアスベストが外部に空気1リットルあたり1本以上飛散していた可能性があると報告した。
そのうち10件は同10本以上を検出しており、同省も「比較的高い石綿繊維数濃度が測定された」と説明している。実際の濃度は同17~190本。アスベストを除去し、作業場内を負圧にする負圧除じん装置の不具合や、エアシャワーでの洗身が不十分で衣服に付着させて外部に持ち出した、養生の不備などが原因とされている。
日本全国アスベストを外部にまき散らす工事だらけといってよい状態なのだが、同省と厚生労働省が現在検討している法改正ではアスベスト除去工事における徹底した濃度測定による現場管理も位置づけられておらず、抜本強化にはほど遠いありさまだ。むしろアスベストを測定させず、知らない間に飛散させてしまえとでもいうのだろうか。
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