◆2019年6月に新たなフォローアップ報告書
フォローアップ報告書では、ケイ氏の前任者も含め、これまで表現の自由に関する国連特別報告者が調査訪問を行った中から5か国が選ばれている。ほかの4か国と調査年は、トルコ(2016)、ホンジュラス(2012)、コートジボワール(2004)、イスラエルとパレスチナ(2011)である。各国政府にはそれぞれの勧告に基づいた質問が事前に送られて、トルコ、ホンジュラス、パレスチナはそれに応えているが、日本政府は返答していない。
日本で2016年の聞き取り調査に関わった専門家や団体、個人には、直接国連から情報提供の依頼が質問と共に送られ、同時にその質問は国連のホームページでも公開されて、一般への情報提供も呼び掛けられていた。その結果、市民団体の「情報公開クリアリングハウス」、「沖縄国際人権法研究会」と「反差別国際運動」、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)、そして筆者からの4つの返答が公表されている。(※5
) そのうちメディアに関する質問への返答をしているのは情報公開クリアリングハウスと筆者である。
他の4か国と比べて、市民社会からの返答が4件というのは少ないほうではない。しかし顕著な違いは、他の国はメディアに関する複数の専門家団体が回答していることである。トルコなどは、6件の返答者のうち少なくとも4つはメディアと法学会や国際ペンクラブ、国際新聞編集者協会など、表現の自由や報道の自由の促進や擁護を専門とする団体である。日本の2016年の調査でも、同種の団体や専門家は調査に参加しており、フォローアップ報告書についても質問が送られていると思われるが、返答がなかったようである。
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