横田基地の周辺上空を訓練飛行する米軍のC130輸送機(2018年撮影・吉田敏浩)

記事1回目より読む >>

◆日米合同委員会の秘密の合意

横田空域と岩国空域で米軍は航空管制を一手に握っている。

なぜそのようなことができるのか。
その法的根拠を記した文書を日本政府は公開しない。

情報隠蔽としか言いようがないが、そうまでして隠そうとするのは、この問題が明らかに日米合同委員会の秘密の合意に関わっているからだと思われる。

それは日米合同委員会の「航空管制委任密約」(1975年)である。米軍に航空管制を法的根拠もなく事実上委任するという秘密の合意だ。

その存在は、1983年作成の外務省の機密文書『日米地位協定の考え方・増補版』(地位協定の具体的な運用を解説した外務官僚用の裏マニュアル。『琉球新報』が入手して報道)で言及されている。

『外務省機密文書 日米地位協定の考え方・増補版』(琉球新報社編 高文研 2004年)には、横田空域や岩国空域での米軍による航空管制業務について、次のような説明が書かれている。                                 

「米軍による右の管制業務は、航空法第九六条の管制権を航空法により委任されて行っているものではなく、合同委員会の合意の本文英語ではデレゲートという用語を使用しているが、これは『管制業務を協定第六条の趣旨により事実上の問題として委任した』という程度の意味」

協定第6条とは、米軍に関わる航空管制について定めた日米地位協定の第6条を指す。

その趣旨とは、日米安保のため民間用と軍事用の航空管制に関し、日米間の協調と整合を図り、必要な手続きなどを「両政府の当局間」で取り決めるというものである。

そして、この「両政府の当局間」で取り決めたのが、日米合同委員会の「航空交通管制に関する合意」(1975年)である。

日米合同委員会の民間航空分科委員会で実務的協議を重ねて決まった合意内容を、合同委員会本会議で承認したものだ。

同分科委員会の日本側代表は国土交通省航空局の管制保安部長、アメリカ側代表は在日米軍司令部第3部(作戦計画)部長で、それぞれの部下の担当官らも委員として出席し協議する。

しかし、上記の「事実上」という言葉は、正式ではなく、法的根拠もないが、実際におこなわれていることを黙認する場合に使われるものだ。

つまり航空法にも、地位協定にも明確な根拠規定はないが、米軍が既成事実としておこなっているので、特権として認めることを意味する。

この合意文書は非公開で、要旨だけが「航空交通管制(改正)」という名称で外務省ホームーページなどに公表されている。

その要旨には、米軍基地の飛行場とその周辺における米軍の航空管制を「認める」とだけ書かれ、「事実上」の「委任」という部分は隠されている。

だから、まさに密約なのである。
次のページ: 日本の民間航空の安全を脅かし... ↓

★新着記事