米軍関係者の責任の所在にはまったくふれていなかった。

 「日米合同委員会の正式な事故調査報告書には、より詳細な事実が載っているはずなんです。それは秘密にしておいて、さも米軍には落ち度も責任もなかったのようにまとめています。被害者には事故の全容、真相を知る権利があるのに、それを知ることができないようにされているのです」

と椎葉さんは、日米合同委員会の秘密主義と日本政府の無責任さを批判した。

 このように重大な情報が明らかにされないのは、米軍が事故調査報告書を裁判所に提供しないからであり、日米合同委員会が報告書や議事録や合意文書などの全文を公表しないからである。

 まさに日米両政府の情報隠蔽と密約が、米軍による事故や米兵犯罪の真相と責任の究明を阻んでいるのだ。

 198734日、横浜地裁は公務中の米軍人にも日本の民事裁判権は及ぶと判断はしたが、公務中の事故の賠償責任は認めず、国側の賠償責任だけを認める判決を言い渡した。

 損害賠償額は4580万円(日本政府が支払う)だった。

米軍機の乗員は最後まで法廷に姿を現さず、米軍関係者は誰ひとり責任を問われなかった。                    

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*関連図書
『「日米合同委員会」の研究』謎の権力構造の正体に迫る(創元社)吉田敏浩 2016年
『横田空域』日米合同委員会でつくられた空の壁(角川新書)吉田敏浩 2019年
『日米戦争同盟』従米構造の真実と日米合同委員会(河出書房新社)吉田敏浩 2019年

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