◆石綿飛散に罰則なし
環境省は除去作業時の監視について委員からの意見が多かったことから次回会合で再度議論する方針を表明した。
複数の委員が求めていたように、基準超過した場合に罰則適用まで位置づけるのであれば、便宜上「総繊維数濃度10本/L」を基準とすることは1つの考え方だろう。
ただし、それ以下だったら飛散させてもよいなどということは許されまい。山神委員が指摘したように、現在のマニュアル上の「目安」に近い「総繊維数濃度1本/L」を指導基準として採用するといったところだろうか。きちんと強制力を持つ規制強化となることを願いたい。
環境省所管の大防法にせよ、厚労省所管の労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)にせよ、現在はアスベストをいくら外部に垂れ流しにしても罰則すらない。そもそも測定義務すらなく、垂れ流しにしたことすらわからない。海外の専門家に話すと「クレイジーだ」と必ず驚かれる。これだけ被害者を量産している、きわめて強力な発がん物質を測定して管理せず、いくらばらまいて吸わせても罰則がないなど、まさしく狂気の沙汰である。
両法とも届け出義務違反などほかの関連規定で罰則適用されても、最大でも6か月以下の懲役または50万円以下の罰金でしかない。そもそも罰則など、まず適用されないのだ。
大防法や安衛法のアスベスト規制は英米豪など厳しく対応する国々や隣の韓国に比べても緩い。結局のところ、そうした国々より規制が緩い現状は経済を優先し、アスベストを扱う作業にたずさわる労働者、そして周辺住民の生命を軽視しているからといわざるを得ない。
こうした経済優先の考え方は大阪・泉南アスベスト国家賠償訴訟の最高裁判決によって明確に否定されたはずだが、いまだ改まっていない。こうした異常な規制や運用を改めない限り、今後も被害者が増え続けることになろう。