◆飛散・散乱の“証拠”発見
旧生活家庭館は国有地の高師緑地公園内にあり、市が無償で借り受けている。国民の財産たる国有地をアスベストで汚染してよいはずがない。飛散した可能性がある以上、調査をして散乱があれば適正な対策で除去する必要がある。
市公園緑地課は「善良な管理者としての注意をもって貸し付け物件の維持保全に努めなければならない」と契約にあると認めた。土壌汚染の調査について聞くと、「そこまで詳しく聞いてない。(建築課で)やられていると理解していた」と戸惑っていた。
11月に現地を訪れて市に指摘したところ、市建築課は調査の必要性を認め「検討したい」と話した。
市建築課は建築物石綿含有建材調査者協会(貴田晶子代表理事)に相談し、12月2日に同協会関係者らと現場確認した。その際、同協会が土壌調査の位置や箇所、範囲などの調査方針を検討するための予備調査として、違法に屋根を撤去した際に金属製の折板屋根を仮置きした玄関部分の屋根に付着した泥などの堆積物を採取した。
この泥を分析したところ12月6日、直径1~2ミリメートルほどのアスベストの繊維束1個を発見したという。分析は実体顕微鏡でまず全体を観察し、その後偏光顕微鏡で調べるASTMインターナショナルの分析法(おそらくASTM D7521)を採用した。
すでにアスベストの飛散防止を目的とした現場養生は実施され、同監督署の作業停止命令は解除された。その養生部分の外部から今回アスベストが検出しており、周辺への飛散があった証拠といえる。市は同日、玄関の屋根全面をシートで覆う保全措置を実施させた。
12月16日に市建築課に改めて確認したところ、「採取したのは、屋根を撤去した時に一番最初に仮置きした、1段下がった玄関部分の屋根に泥がたまっていて、ここにある可能性が一番高いだろうということで堆積物を採取して調べていただいた」と説明する。
その際に採取したのはこの1カ所だけ。土壌汚染の調査は検討しているところで年内には実施したいと当時話しており、12月下旬には調査が行われたとみられる。1カ月程度で調査結果が出る予定だ。
市は施工業者の契約解除をしない方針。そのため今後は規制すらろくに理解していない違法業者にどうやってきちんと除去作業をさせるのかという難事が待ち構えている。また作業時にアスベストが飛散していないかを監視や測定で確実にすることや、除去工事が適正に完了したのかの検査も課題である。さらに土壌調査結果を踏まえて、アスベストの散乱などがさらに見つかった場合、周辺の清掃作業も必要となる。これも容易ではあるまい。土壌調査の結果とともに豊橋市の取り組みが注目される。