国会議員に毎月100万円が支給される文書通信交通滞在費(以下、「文通費」)を、自らの政治団体に入れ、自らに領収証を発行する「セルフ領収書」問題。日本維新の会の石井苗子(みつこ)参議院議員が、用途が定められ人件費に使うことができない「文通費」から、2017年以降に2700万円を超える人件費を払っていたことが明らかになった。専門家は「違法な目的外支出」と指摘している。(鈴木祐太)
◆なんと84%以上が違法支出の疑い
日本維新の会が公表している「文通費」の使途報告書によると、石井議員は2017年以降、「文通費」から直接人件費(賞与、社会保障費を含む)を払った額が165万円と記載されている。さらに自身が代表を務める「日本維新の会参議院比例区第38支部」(以下、政党支部)に寄付をした後、人件費として支払った額は1224万4717円に上る。また、同じく自身が代表を務める政治団体「石井苗子ときぼうの会」(以下、きぼうの会)に自ら寄付をした後、人件費として支払った額は1389万2135円だ。つまり合計で2778万6852円が、「文通費」から人件費として支払われている計算になる。
「文通費」は一カ月に100万円支給されるので、2017年1月から2019年9月までの33か月間で、実に「文通費」の84%超が目的外使用されているわけだ。
◆「文通費」からボーナス190万円まで支出
さらに石井議員が支払った人件費の中のには職員の賞与(ボーナス)が含まれていることが使途報告書から明らかになった。
2016年12月に自身が代表を務める政党支部に、「文通費」を寄付し、職員2名に対して30万円、同じく自身が代表を務める「きぼうの会」も職員2名に対して合計15万円のボーナスを支払ったと記載されている。
職員へのボーナスは2017年6月と12月にも支給されていた。6月には政党支部が職員に25万円と、「きぼうの会」も職員に40万円、12月には、政党支部と「きぼうの会」ともに、40万4923円ずつを支出している(2017年の使途報告書には合計額しか記載されておらず、何人に支払ったかは不明)。
使途が定められた「文通費」からボーナスなどの人件費を支払うことについて、政治資金問題に詳しい上脇博之神戸学院大学法学部教授は次のようにコメントした。
「そもそも『文通費』は、国会法第38条で『公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため』と定められて各議員に交付されているので、公的な文書費、通信費、交通費、滞在費にしか支出できません。それ以外の目的に支出するのは違法です。したがって、政党支部や政治団体の職員の人件費に支出することは目的外支出になり違法。賞与も人件費に含まれるので、違法な支出になります」
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