◆測定義務づけ356件で「必要」
海外で導入されている除去業者へのライセンス制についても325件が導入すべきとの意見だ。ライセンス制が導入されれば、不適正工事を繰り返す業者に対し、取り消しなどの措置が可能となることから、現場作業の適正化が進むと期待されている。
ところが、同省は「必要性の検討や体制の整備に時間を要する」として「参考」とするのみ。今後の検討課題にも含まれていない。
さらに同省が規制を見送った除去等作業時の大気濃度測定について、「石綿の飛散による発がんリスクの把握のために必要」などとして義務づけを求める意見が356件に上った。
同省は「現状では全国一律での測定の制度化には困難な課題が残っているため、関係者が協力して測定実績を積み重ねるとともに、課題解決に取り組む必要があるとした」と主張する。
ちなみに同省が課題の1つとして「測定に平均で5~7日要し」と結果が出るまでに時間が掛かることを挙げているのだが、この分析納期は通常価格のうえ、必要なら現場での測定も可能とじつに349件が指摘している。測定・分析機関などからも「測定が義務付けられれば、迅速な測定の体制が整備される」「分析機関の体制整備ではなく、大気濃度測定義務付けの制度化が先」と当然の反論が13件に上った。
小委員会でも指摘されていたことだが、作業時の測定はすでに15年前から義務づけている自治体もあり、海外では当たり前に実施されていることだ。日本よりアスベスト使用量がはるかに少ないフィリピンでも除去作業現場内の測定は2000年から義務づけられている。
当日中に速報値を出すことはごく当たり前に行われている。小委員会で同省のいう「課題」など実際には存在しないと指摘されていた通りである。
かねて東京労働安全衛生センター労働衛生コンサルタントの外山尚紀委員ら専門家から抜本改正が必要と指摘されていた事項については、ほとんど回答らしい回答はなかった。1月9日の小委員会でも外山委員が「答申案にかかれていることを繰り返しているだけで、これで答えていることになるのか非常に疑問に感じます」と批判している。
一応、測定の義務づけに関連して同省は、今回の法改正後も継続的に情報収集などに努め、体制や運用含め2021年度から再検討する方針を表明した。
そもそも同省が示す「課題」は2013年2月の中間答申でも指摘されていた内容にすぎず、当時すでに継続検討することが決められていた。同省が再び継続検討を打ち出したことで同省が7年間サボってきたことが改めて浮き彫りになったわけだが、その釈明はなかった。
何度も指摘していることだが、日本ではアスベストをいくら飛散させて周辺の人びとに吸わせても罰則はない。しかも作業時の測定義務もないため、どれくらい吸わされているかすら、知ることができない。そんな異常な状況がまだ続くということだ。早急に再検討すべきだろう。
測定以外の課題についても海外では当たり前に実施されていることばかりだ。国民からもこれだけ多数の意見が出ているのに現状では改修・解体作業に少しでも遅れが生じかねない規制は軒並み先送りした。「アスベスト飛ばし放題、吸わせ放題」が続く現状に、いまだ人の命より経済優先との国の姿勢が露骨に現れている。
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