◆購入したことを把握していなかった企業側
パーティ券を購入した企業16社に、購入した理由について質問した。パーティの趣旨に賛同した、大阪の発展のためという回答がほとんどだったが、大阪に支店を持ったためという回答もあった。また、筆者が質問状を送付するために当該企業に電話した際、「そういった事案はない」と、パーティ券購入を否定した企業もあった。
筆者が再度質問したところ、その企業は「当該収支報告書のとおりであり、その他のご質問につきましてはお答えするつもりはありません。本件に関しましては、これ以上対応致しかねますことも併せてお伝えいたします」と文書で回答があった。何があったのだろうか?
「市長就任1周年記念パーティ」のパーティ券に関して、吉村知事及び吉村洋文事務所に質問状を送ったが、期限までに回答はなかった。
◆大阪市と契約の状態にある業者がパーティ券を購入
株式会社フジオフードシステムが75万円分のパーティ券を購入していたことが「吉村洋文後援会」の政治資金収支報告書に書かれている。大阪市が公表している資料によると、フジオフードシステムは2014年に競走入札の結果、大阪市から使用許可を受けて大阪市役所地下2階で「OSAKA市役所食堂(まいどおおきに食堂)」を経営している。
つまり、フジオフードシステムがパーティ券を購入した2016年は、すでに大阪市と事業契約関係にあったわけだ。フジオフードシステムは、筆者の問い合わせに「当社購入のチケットについては人数分、会に参加させていただいております」と回答していることから、「事実上の政治献金」とは言えないが、大阪市の建物を使用して収益を得ているわけで、吉村市長(当時)後援会のパーティ券購入は問題があると受け止められても仕方がないだろう。
以下は、筆者が調べた維新の会所属の市長が誕生(2011年)して以降、フジオフードシステムが大阪市の事業を受注した実績である。
・2014年、4社(1社欠席)が参加した競争入札によって、大阪市役所地下2階の使用許可契約。(5年契約)
・2019年、フジオフードシステム1社だけが参加した競争入札によって、大阪市役所地下2階の使用許可契約。(5年契約)
◆市と随意契約をしている企業が吉村氏のパーティ券購入
「吉村市長就任1周年記念パーティ」のパーティ券を購入した企業の一つに株式会社乃村工藝社がある。乃村工藝社は30万円(20人分)のパーティ券を購入、参加人数についての問い合わせには「8名が参加し、12名が業務多忙により欠席した」と回答している。つまり、18万円分(12人分)は「事実上の企業献金」に当たる可能性がある。
乃村工藝社は、パーティのあった2016年から3年間、大阪市の事業である「大阪城石垣展示に関する業務」を随意契約している。2013年に下水道科学館、2014年には、市が大阪府と共同出資している「ピースおおさか」のリニューアル工事に関する業務を請け負っていた。2013年、14年は橋下徹氏が大阪市長であったが、2016年から3年間は吉村氏自身が大阪市長を務めている。
吉村氏は国会議員を任期途中で辞任し、橋下市長の後継として維新の会の公認で市長選に立候補し当選している。
維新の会所属の市長が誕生(2011年)して以降、乃村工藝社が大阪市の事業を受注した実績は次の通りだ(筆者調べ)。
・2013年 下水道科学館に関して業務委託を受注(市長:橋下徹)
・2014年 ピースおおさか(大阪府と共同出資)リニューアル工事を受注(市長:橋下徹)
・2016~18年 大阪城石垣展示に関する業務委託を随意契約で受注(市長:吉村洋文)
大阪市と契約状態にある企業がパーティ券を購入することについて、政治資金問題に詳しい上脇博之神戸学院大学法学部教授は
「市と契約している企業からパーティ券を購入してもらうと、税金が吉村洋文後援会に還流していることになるので、政治的・道義的には問題です。そのうえパーティに欠席した分は寄付(献金)になるので、政治資金規正法が禁止する企業献金になります。同法によると、違法献金をした企業側も違法献金を受領した政治団体側も処罰されます」
と話した。
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