◆「原発銀座」カメラ向け7年
福島第一原発事故は原発の安全性や運用について大きな疑問を投げかけた。原発を抱える地域は「原発があることの不安、なくなることの不安」に揺れた。日本有数の「原発銀座」と呼ばれる福井県若狭湾沿岸部で、40年以上、原発にあらがってきた松下照幸さん(美浜町在住)を追ったのが、このドキュメンタリー映画だ。
松下さんはデモでスローガンを声高に叫んだり、機動隊と衝突するような闘い方はとらない。生活者として原発と地元のありようを見つめながら、立ちはだかる原発ムラと向き合ってきた。
赤い花をつける「紅どうだんツツジ」の木。地域の原発依存をなくし、いつか地場産業になればとの思いで、松下さんは紅どうだんを植え続ける。岡崎まゆみ監督は7年間にわたり彼に密着、「40年 紅どうだん咲く村で」を制作した。「松下さんの生き方を通して、原発立地地域の現実 を知っていただけたら」と話す。(玉本英子・アジアプレス)
◆40年、原発にあらがう
岡崎監督は、松下さんにカメラを向けた思いを語る。
「東日本大震災が起き、福島第一発電所での水素爆発や白い防護服を着た人たちの映像を見て、原発がこんなに危険なものなのかと衝撃を受けました。まずは知りたいと、私が暮らす関西に送られる電気の供給源である福井県の若狭湾周辺の原発地域を訪ねまわりました」
「住民の多くは原発関係の仕事に従事していて、原発のことを話せない空気がありました。一方、反対を訴える人たちも数人いました。そのひとりが、松下さんです。彼は原発に代わる政策提案を町長へ出し続けるのですが、次々と断られます。それでも決してあきらめません。なぜここまで闘えるのだろう。その姿に魅かれ、カメラを回し始めました」。
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