◆極秘撮影されたモロッコ支配の過酷
3月14日から開催されるイスラーム映画祭5で、アフリカ最後の植民地と言われる西サハラを舞台にした映画『銃か、落書きか』(2016年)が上映される。モロッコによる占領の実情と、西サハラの民サハラーウィの焦燥と葛藤を伝えるドキュメンタリー映画だ。
◆撮影を極秘で敢行
西サハラでは、大西洋岸のほとんどの地域において、モロッコによる軍事力を背景にした占領が続けられている。元来この地に生活してきたサハラーウィと呼ばれる人々は、モロッコの占領政策に苦しみながら、45年もの月日を過ごしてきた。
モロッコ占領地への取材者の入域は厳しく制限されており、ここで国外メディアによる取材が許可されることは、まずない。『銃か、落書きか』を制作したスペインの映像作家ジョルディは、現地のサハラーウィと連携しながら、撮影を極秘で敢行した。
国連において西サハラは、帰属未決の地であり、独立かモロッコの一部となるかを決める住民投票の実施が待たれる地域とされている。しかしモロッコは、植民と開発を続けながら、西サハラ支配の既成事実を積み重ねてきた。サハラーウィが西サハラ占領政策に異を唱えれば、政治犯としてとらえられてしまう。投獄や拷問が日常的に行われ、声をあげる自由はない。
このような状況においても、サハラーウィたちは住民投票の実施をあきらめず、声をあげ続けてきた。長期にわたって投獄され、収監時に受けた暴力の傷痕に今も苦しみながら、サハラーウィの活動家たちは様々な手を尽くし、占領に抗い、その不当性を訴え続けている。
また、サハラーウィは、占領地の実情を外部に伝える取り組みも行っている。Equipe Mediaと呼ばれるメディアチームを編成し、モロッコ当局による弾圧や暴力の実情を、文章と写真、映像とともに、インターネットを介して国際社会へ配信してきた。困難と危険を伴いながらも、西サハラの実情を世に伝え続けることもまた、サハラーウィの戦いの一部である。