◆コロナうつる? 死者埋葬に激しく抗議も
激しい抗議の中には、新型コロナウイルス犠牲者の埋葬に向けられたものもある。
3月8日、同じくギーラーン州マースーレ村で撮影されたとされる動画では、新型コロナ感染による死者の埋葬に近隣住民が激しく抗議する様子が映っている。
ネットで拡散されたこの動画では、カメラを回す撮影者が、たくさんの民家と接している村の墓地に新型コロナウイルスの犠牲者が埋葬されることと、墓穴が3メートルの深さに満たないことを、声を荒げて訴えている。
イランでは通常、墓穴は地下2メートル程度だが、新型コロナウイルスによる死者の場合は深さが4メートルは必要だと多くの人が考えているようだ。墓地からのウイルスの拡散を懸念する人びとがいる一方で、この動画には「無知な彼らはウイルスが何世紀も生き続けるとでも思っているのか?」などと村人の反応に否定的なコメントもつけられている。
宗教上の理由から今も土葬が行われているイランでは、どのような村や町でも郊外に住民のための共同墓地がある。疫病の拡散を防ぐため、遺体は埋葬の直前に入念な洗浄と殺菌が行われる。墓地には遺体洗浄所があり、専属の遺体洗浄人がいる。
◆遺体洗浄に終わりがない
多くの新型コロナ感染者を出しているイラン中部の宗教都市ゴムの墓地の遺体洗浄場を撮影した動画には、黒いビニールに包まれた遺体が施設内の通路に溢れかえり、防護服の男が忙しく立ち回る様子とともに、「すべてコロナウイルスの犠牲者です。いくら洗浄しても(遺体が多すぎて)終わりがない」という撮影者の解説が入る。この動画の撮影者は無断で洗浄所内を撮影したことで後日逮捕されたと国営メディアが報じている。映像の真偽はともかく、遺体洗浄場が大混乱に陥っているのは確かなようだ。
こうした事態を受け、多くの遺体洗浄場では、感染者の遺体と一般遺体用に洗浄場を分けるなどしている。イランメディアのISNA通信は、洗浄人の安全を確保するため、自動遺体洗浄機の導入も検討、と伝えている。
こうした遺体にまつわる問題は、土葬というイスラム特有の問題とは言いきれないようだ。日本でも新型コロナウイルスの犠牲者だと分かると、霊柩車や火葬場の使用を断られる事例が起き始めているという。遺族の悲しみに拍車をかけるこうした出来事は、残念ながらこれからますます増えてゆくことだろう。