◆感染検査はようやくこれから本格化
WHOにはよれば、中国政府は感染検査(PCR)に必要な装備を1月から北朝鮮に支援していた。ロシアも2月に北朝鮮の要請に応じて感染検査キット1500個を寄付したと発表している。
これら限られた検査器具は、平壌の政権中枢とその周辺、外国人と接触の多い部署、軍隊などから優先的に投入されたはずた。
アジアプレスでは、北朝鮮国内の取材協力者が中国国境に近い恵山市、咸鏡北道茂山(ムサン)郡、会寧(フェリョン)市、清津(チョンジン)市などで、病院関係者と防疫当局者と接触して調べたが、4月10日時点で、コロナウイルス感染検査を実施しているという情報は一件もなかった。
地方都市では検査不能状態が長く続き、感染者発生の有無すら判断できなかったのではないか。
ユニセフや「国境なき医師団」の支援物資が入ったのは3月末になってのことだ。北朝鮮で感染検査が本格化するのはやっと今からだ、というのが筆者の推測である。言い換えると、感染が明らかになったケースが、今になって続出しても不思議ではないのである。
◆人民は餓死を心配し始めた 経済悪化は深刻
コロナウイルスの流入を防ぐため、金正恩政権が1月末に中国国境を封鎖していたことは述べた。初期の防疫には効果があったが、その副作用は深刻だ。貿易が止まって中国に依存してきた物資が入ってこなくなった上、国内の移動統制が厳しくなり物流が麻痺している。商行為や荷役などの日雇い仕事で日銭を得ていた庶民層に大きな打撃が出ている。
「コロナで死ぬより飢えて死ぬ方が早いのではないか、皆がこのように言っている」
国内の雰囲気に問うと、取材協力者者たちは一様にこのように言う。
経済が厳しいのは政権も同じはずだ。物資の調達と、貿易や観光などの外貨収入は大打撃を受けているはずで、金正恩氏が描いた今年の国家運営計画には大きな狂いが生じていることだろう。
追記
4月12日晩、北朝鮮北部に住む取材パートナーと連絡がついた。最高人民会議の延期について、当局からの説明はないそうだ。一方、この日から街中は厳戒状態になったという。住んでいる地区内を保安員(警察官)が常時巡回するようになり、「保安員たちが町内に暮らしいるような状態だ」と伝えてきた。(石丸次郎)
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
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