労働党中央委員会の政治局会議を司会する金正恩氏。2020年4月12日の労働新聞より引用

◆「国会」は2日遅れでようやく開会

異例のことであった。4月10日に予定されていた最高人民会議(国会にあたる)が突然延期され、12日にようやく開催された。

毎年4月に開かれる最高人民会議は、形式上、唯一の立法機関、最高主権機関と位置づけられ、前年の決算と次年度予算の承認、法や憲法の改定などを行う。金一族独裁の北朝鮮にあって、建前であっても「共和制」を採っていることを示す重要な会議である。開催は3月に告知されていた。

一方、金正恩氏の司会で労働党中央委員会政治局会議が11日に開かれた。朝鮮中央通信の記事を整理すると、討議のポイントはコロナウイルス対策、国家予算の承認、労働党最高幹部の人事の3点だった。金正恩氏の実妹の金与正(キム・ヨジョン)氏が党中央委員会政治局委員候補という核心幹部に復活したことが目を引いた。

2日遅れで開かれた最高人民会議の代議員は700人弱とみられ、全国から平壌に召集される。この中にコロナウイルスの感染者、あるいは感染が疑われる人がいたのかもしれない。あるいは、今になって、国内で感染者の数が増えたのかもしれない。

◆初期対応は迅速だったが…

金正恩政権のコロナウイルス流入遮断策は迅速だった。春節前の1月22日に中国人観光客の入国を止め、1月末には中国国境を完全に封鎖。それまでに中国人と接触していた人を徹底隔離した。人権や個人の都合などお構いなしの強権体制ゆえ、初期の国内防御には成果があったものと思われる。

平壌に駐在する世界保健機構(WHO)のエドウィン・サルバドール事務所長は、ロイター通信の取材に「4月2日までにコロナウイルス診断検査を受けたのは709人だと北朝鮮当局から報告を受けた」
と述べた。

この報告が正しいのか不明だが、感染検査数がわずか709というのはあまりに少ない。北朝鮮政府は1月以来、約1万人を隔離してきたと発表しており、その7%しか検査できていないことになる。

北朝鮮当局は「感染者ゼロ」という発表を続けている。その真偽は不明だが、感染の有無を調べるキットや機器が足らず(あるいは地方都市にはまったくなく)、医療・防疫当局も、判定しようかなかったのではないか。
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