アスベスト規制強化をめぐり厚生労働省が5月29日まで実施しているパブリックコメントで改正内容が省略され、「意見募集の内容がわからない」と関係者からとまどいの声が上がっている。(井部正之/アジアプレス)
◆国民だますパブコメか
同省は労働者の保護を目的に建物などの改修・解体時のアスベスト規制を定める労働安全衛生法(安衛法)の「石綿障害予防規則(石綿則)」とこれに関連して、アスベストの事前調査を実施する資格制度を定める「建築物石綿含有建材調査者講習登録規程」を改正するとして、4月30日にパブリックコメントの募集を始めた。
ところが、各パブコメで改正案は示されず「概要」のみ。問題は、改正内容がきちんと記載されていないことだ。
石綿則改正案の概要では、建物などの改修・解体前にアスベストの事前調査を実施する義務があるが、これまで網羅的な実施が位置づけられていなかったことから、「当該作業の対象となる建築物等の全ての材料について行わなければならないこと」や「必要な知識を有する者」による実施を位置づけている。
ところが、これと合わせて「目視及び設計図書により石綿等の使用の有無を確認する方法以外の調査方法を追加すること」との怪しげな文言があるのだ。
事前調査では設計図書からアスベストが含まれる可能性のある建材を拾い上げ、実際に現地調査で確認し、アスベストがあると「みなし」て判断するほか、建材を採取して分析して有無を確認する。
必要に応じて分析することはすでに石綿則に定められている。よって、分析のことではない。
では、目視や設計図書以外の「調査方法を追加」するとは一体なんなのかと同省の示す概要を読み進めても、いっさい記載がないのだ。関連資料も示されていない。つまり、こうした通常の方法以外の怪しげな例外措置が具体的な内容すら示されずにこっそり定められようとしている可能性がある。
実際にある事業者は「分析のことですよね」と勘違いしていたほどだ。
同省化学物質対策課に確認したところ、石綿則改正に向けた検討会の報告書に記載された内容を教えられたが、実際のパブコメ案に記載がない以上、本当かどうか判断のしようがない。
そもそも新たに調査方法の追加するという重大改正について、その具体的な内容を示さないのでは国民をだまそうとしているといわれても仕方あるまい。