◆心の傷、深く
戻ってまもない頃、「イスラムを信じぬお前を殺す」と母親にナイフを向けたという。母は変わり果てた姿に動揺するばかりだった。
「息子はようやく落ち着きを取り戻したようです。でも、いつまた心に潜む別の姿が現れるか……」
フアッドの父は、いまも行方がわからない。幼い妹2人はシリアのIS関係者に拉致されたままで、高額の身代金を要求されている。一家には支払うお金などない。
クルド自治区には、ヤズディ教徒の子どものための学校がある。IS支配地域から逃れてきた多くが心に深い傷を負っていた。心のケアにあたる教員、シャール・クデラ・スレイマン氏(25)は説明する。
「ISは『異教徒は殺せ』と幼い心に刷り込んだ。マインドコントロールから脱するには1年以上はかかるだろう」
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