IS戦闘員には最後まで抵抗を続け、戦死した者がいた一方、降伏した部隊もあいついだ。写真はシリア民主軍に投降するIS戦闘員ら。(2019年3月・YPJ映像)
バグーズでの爆撃で左足を失ったフアッド。シリア民主軍が拘束、ヤズディ教徒だったことがわかり、イラク・クルド自治区の母のもとに戻れた。(2019年11月・玉本英子撮影)

◆心の傷、深く

戻ってまもない頃、「イスラムを信じぬお前を殺す」と母親にナイフを向けたという。母は変わり果てた姿に動揺するばかりだった。
「息子はようやく落ち着きを取り戻したようです。でも、いつまた心に潜む別の姿が現れるか……」

2014年8月、ISはイラク北西部シンジャルのヤズディ教徒を襲撃。住民は虐殺されたり、イスラムへの改宗を強いられた。写真は拘束されたヤズディ住民。(2014年・IS映像)
シンジャルの襲撃でフアッド(左)一家は別の町に移送。その後、家族と引き離された。当時、弟(右端)は別の少年軍事キャンプに入れられた。(2019年11月イラク・クルド自治区で玉本英子撮影)

フアッドの父は、いまも行方がわからない。幼い妹2人はシリアのIS関係者に拉致されたままで、高額の身代金を要求されている。一家には支払うお金などない。

クルド自治区には、ヤズディ教徒の子どものための学校がある。IS支配地域から逃れてきた多くが心に深い傷を負っていた。心のケアにあたる教員、シャール・クデラ・スレイマン氏(25)は説明する。
「ISは『異教徒は殺せ』と幼い心に刷り込んだ。マインドコントロールから脱するには1年以上はかかるだろう」
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