愛媛県警は7月21日、同県警の「発注ミス」により、アスベスト(石綿)対策せずに違法解体していたと発表した。取り締まる側の法違反ということもあり、新聞やテレビはこぞって報じた。だが、詳しく調べてみると県警だけの責任ではなさそうなのだ。(井部正之/アジアプレス)
◆県警が自らの「法違反」を発表
違法工事があったのは松山東警察署における官舎3棟(松山市北持田町)の解体工事。同県警会計課によれば、鉄筋コンクリート造2階建て(延べ床面積約180平方メートル)の署長・副署長宿舎で「外壁の吹き付け材にアスベストが含有していた」にもかかわらず、大気汚染防止法(大防法)などで定められた飛散防止措置なしに7月20日午前8時半から約1時間半、外壁などを解体していた。
使用されていたアスベストはクリソタイル(白石綿)で、定量分析までしていないが含有率は0.1~5%程度とみられている。
アスベストが飛散した可能性のある作業の発覚後、施工業者は現場に飛散防止剤を散布し、養生シートでおおった。また同日、現場の風下に当たる建物北側から4~5メートルの敷地境界2カ所で午後3時ごろから空気中のアスベストを含む「総繊維数濃度」を測定したが、いずれも定量下限値未満だった。
ただし、飛散のおそれのある作業から約5時間後に試料採取を開始しており、違法解体時の飛散状況については同県警会計課も「なんともいえない」と実際にはわかっていないことを認める。
県警発表の「発注ミス」とは、発注時の図面で、アスベストの記載を取り違えていたこと。署長・副署長宿舎の外壁に使用されていたのに、「別の(木造平屋の職員)宿舎の外壁にアスベスト含有と書いていた」(同会計課)ことである。その結果、施工業者が誤認した。
同県警は、今回の違法工事は自らの「発注ミス」が原因のため、設計・施工業者に「責任はない」と説明してきた。
自らの非を認めた潔い対応ではあるが、詳しく取材してみると、今回の違法工事は県警の不手際だけによるものではなさそうなのだ。