8月初旬に北朝鮮の中部地方を襲った集中豪雨では、穀倉地帯の黄海道(ファンヘド)地域が大きな被害が被った模様だ。しかし、新型コロナウイルスに対する非常事態が宣言された状況下で厳しい移動統制と住民監視が続いており、北朝鮮国内でも現地の具体的な被害情報がわからないでいる。(カン・ジウォン)
20日に開かれた韓国国会の情報委員会で、国家情報院は北朝鮮の豪雨被害について、2016年よりも農地の冠水被害が大きかったと説明した。北朝鮮メディアでも豪雨被害を伝え、7日には金正恩氏が日本製高級車のトヨタ・レクサスで現地視察した様子を報じていた。
アジアプレスでは、8月10日前後から、北朝鮮各地に住む取材協力者に情報収集を依頼した。まず、平安北道(ピョンアンプクド)に住むAさんは次のように報告してきた。
「黄海道地域につてのある人たちに現地に問い合わせてもらった。凄まじい豪雨被害で、農業生産は壊滅的だという人もいたが、いや被害は一部地域だけだったという人もいた。情報が足りず自信がない」
――今、情報が得にくくなっている理由は?
「7月の終わりに、コロナウイルスに対する特別警報が出た。そのため、他地域と往来が完全に禁止されていて、商売などで水害被災地の近くと行き来する人は皆無だし、大都市に出て情報収集するのも難しい」
――被災地支援の動きはあるか?
「人民班で一世帯当たり10中国元(約150円)の支援金を徴収された」
◆情報収集するだけでスパイと怪しまれる
咸鏡北道(ハムギョンプクド)に住む労働党中堅幹部にも情報収集を依頼した。
「現地の様子を知る人に聞いた。稲が水に浸かってしまい、今年の黄海道の農業は壊滅だそうだ。『仕事がなくなった。秋からどうやって食べていこう』と農場員たちは心配しているそうだ。被災農場には1カ月分の食糧が支給されたそうだ」
――被害の大きかった地域、農場の名前は? 人命被害は?
「それがわからない。そこまで教えてくれないのでたどり着けない」
――軍隊が被災地支援に入っていると報じられたが。
「そのようだ。私たちも復旧作業に入る兵士用にマスクを提供させられた」
Bさんが情報収集に苦戦しているのは明らかだった。その理由について次のように説明する。
「携帯電話であちこちに電話して調べたが、『なぜ、北部地域の人間が水害のことを知りたがるのか』と怪しまれた。電話は盗聴されているに決まっているから、誰もが余計なことを話さないように気を付けている。特に最近は社会統制が厳しいし、情報流出させる敵対行為(スパイ)を取り締まれとキャンペーンをしているので、誰もが怖いのだ」
(カン・ジウォン)
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
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