2019年の中皮腫による死亡者数が1466人だったと厚生労働省が発表した。1500人を下回るのは2014年以来4年ぶり。だが、累計ですでに2万6608人。アスベストによる被害がほとんどとされ、今後も増加が見込まれる。(井部正之/アジアプレス)
◆計2万6000人超でも初期段階
中皮腫死亡者数は、人口動態統計で中皮腫による死亡者を調べるようになった1995年以降のもの。
2019年の死亡者数は、前年より46人減で、現段階でもっとも死亡者数が多い2017年より89人減った。また2014年以来4年ぶりに1500人を下回った。
だが、すでに述べたように累計で2万6608人を数える。統計は1995年からだが、それ以前から被害は出ている。厚労省資料によれば、1974年から1994年までの20年間に中皮腫で労災認定を受けた人で亡くなったのは250人に上る。
すべての中皮腫死亡者を網羅できているわけではないが、中皮腫の死亡者は残存する資料で1974~1994年の20年間で250人だったのが、1995年には2倍の500人に増加。さらに20年後の2015年に1504人と3倍増と急激に被害が増えているのが実態だ。
アスベスト使用量と中皮腫死亡者数には相関があることがよく知られ、現状の被害はまだ初期段階といわれている。
このことをイギリスとの比較から見ていきたい。アスベスト輸入量と中皮腫死亡者数についての日英比較を示すと、冒頭のグラフのようになる。資料は各政府の発表などから作成した。
イギリスではアスベストの産業利用は19世紀から始まっており、とくに1930年代以降、利用量が大きく増えていく。最盛期は1960~1974年までの15年間で、1962年を除いて15万トン以上が輸入された。
輸入量のピークは1973年で約19万8000トン。そこから急激に減少している。使用禁止は1999年である。
日本でも19世紀末から産業利用が開始。軍需利用などで1930年代に4万トン超となった時期があるが、その後の禁輸措置で停止。再び大きく伸びるのは第二次世界大戦後のことだ。朝鮮戦争による特需を背景に1950年代にビル建設ブームが起こったのである。