◆「都構想」の先取りとして府に移管された市立特別支援学校の現状
大阪市が廃止され、財源や権限が大阪府に移っても「住民サービスが低下することはない」と推進派は主張する。だが、4年前に同じような説明を聞き、裏切られた人がいる。「都構想」の先取りとして府に移管された市立特別支援学校12校の生徒と保護者、教職員たちだ。府に移管された支援学校の現状について、「大阪府立障害児学校教職員組合」書記長の西面友史(にしおゆうじ)さん(41)に聞いた。(新聞うずみ火 矢野宏)
「支援学校の法律上の設置義務は都道府県にある」「支援学校の運営については広域自治体である府に一元化する」
2014年1月、当時の松井一郎知事と橋下徹市長が合意したとして、府市統合本部が一方的に発表した。学校関係者には事前に何ら説明もなかった。
「二重行政の見直し」が理由だったが、西面さんは「府と市において、支援学校の設置について明確な役割分担がなされ、二重行政は存在していません」と言い切る。
本来、支援学校の設置義務は都道府県だが、政令指定都市にも市立の支援学校がある。大阪の場合、大阪市民と堺市民の障害児が市立の支援学校に通い、それ以外の府民の障害児が府立の支援学校に通っていた。西面さんは「歴史的にも大阪市立の障害児学校は全国でも先進的な役割を果たしてきたのです」と切り出す。
「大阪市立盲学校は京都盲学校に次ぎ全国で2番目に整備され、市立聾学校は全国に先駆けて手話教育を展開。思斉(しせい)特別支援学校も最も古い知的障害の養護学校として整備されました。それに地域の小中学校との連携も、同じ大阪市立であることによりスムーズに行われてきたのです」
それだけに、保護者や教職員たちは不安だった。「府への移管が行われれば、府立支援学校とのバランスをとるために、これまで行っていた大阪市の独自事業の多くが切り捨てられ、教育条件が低下するのではないか」――。