教育関係者だけでなく、卒業生や障害者団体なども反対を呼びかけて1万5000筆を超える署名を府議会に提出。知事や教育長に「緊急要望書」を送ったが、交渉のたびに府教委と市教委から聞かされたのが「教育条件は後退させない」という言葉だった。
府移管は16年4月に強行された。その後、保護者らの不安は的中する。まず、これまでの予算が大幅に減らされた。
「画用紙や粘土などの『教材費』については、市立では公費化されていましたが、府立では原則として保護者負担でした。移管後2年間は激変緩和で維持されましたが、3年目からは府のルールに合わせて半減されました」
西面さんが示した教材費の推移を見ると、16年度には3630万円だったのが、18年度には1830万円にまで減額されていた。
また、人手が必要な肢体不自由の子どもたちの学校に、大阪市の独自予算で「実習教員」を多数配置していた。だが、移管後は府の基準に合わせ、37人の実習助手がリストラされた。
さらに、図書室の本の購入費も大阪市立の時は年間50万円だったが、府立になって9万円に減額された。
「支援学校では、絵本が教科書代わりです。まずは興味と関心を持ってもらい、授業に入っていくのですが、欲しい絵本も買えないのが実情です」
西面さんら教職員労組が「府立と市立の高い方に合わせて教育条件の向上を図るのが筋ではないか。低い方に合わせて削減してどうするのか。話が違うではないか」と抗議したが、市教委には「府立になったのだから府教委に言ってくれ」と言われ、府教委にただすと、「府立だから府のやり方に従ってください」と言われたという。
「府への移管は、十分な審議もなく、保護者や教育関係者らの反対を押し切って強行されました。府議会の審議の中で、当時の松井知事は『府移管後も、これまでと教育やサービスの内容が大きく変わるものではない』と答弁しましたが、反故にされました。私たちには今進められている『都構想』に重なって見えます」
組合では障害児学校の教育諸条件の整備を求めている。だが、一度府立になった市立の支援学校はもう二度と戻れない。
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