◆食糧・食品は不足なし
それでは国産品はどうなのか? 12月初旬に市場調査した茂山郡の協力者によると、味噌は国産品が売られていて1キロ当たり4800ウォン(実勢レートで約(約88.7円)、醤油は中国産が消えて以降、農村で作ったものが出回っている他、国が軍隊に供給する「乾醤油」が1キロ4万5000ウォン(約850円)で売られているという。
※「乾醤油」は固形で、1キロが水で溶くと10リットル程度になる。
コメやトウモロコシ、小麦粉、ジャガイモなどの食糧は、全国どこの市場でも十分な量が販売されていて不足は現れていない。またインフレを警戒する当局が上限価格を定めて価格統制を行っている。違反者は商品没収の厳しさだ。
12月11日の1キロ当たりの価格は、白米4800ウォン(約88.7円)、トウモロコシは1800ウォン(約33.3円)。春先からロシア産の小麦粉が、初夏以降は中国米が大量に出回るようになった。おそらく支援食糧だと思われる。
パンや菓子などの食品も国産品が市場で売られていて不足はない。中国製品をうまく代替出来ている数少ない品目だが問題がないわけではない。
「すぐカビが生えたり腐ったりするので、客と販売者間でトラブルが多い。中国から防腐剤や添加物が入ってこなくなったからだ」と、両江道の協力者は言う。
※気温が寒くなり、燃料も住民に大きな問題だ。 木材が比較的豊かな両江道では、暖房用の薪が1立方メートル辺り130中国元(約2015円)。現金収入が減少した住民たちには大金で、寒さが厳しくなった今、暖房なしでに我慢しなければならない世帯が多いという。
◆大企業の車両も動かなくなった!
住民たちがもっとも不便を感じているのは石鹸が消えてしまったことだという。歯磨き粉や歯ブラシは新義州(シニジュ)化粧品工場で作られた国産品が市場で流通しているが、石鹸だけは国産品も市場にないとのことだ。「原材料が不足して国内で生産できなくなっている」と茂山郡の協力者は言う。
日用品ではないが、深刻化しつつあるのは動かない車両が増えていることだ。北朝鮮を走るバス、トラック、乗用車のほとんどは中国車。その部品が中国からまったく入って来なくなっているのだ。
大型国営企業の茂山鉱山の事情について、協力者は次のように伝えてきた。
「鉱山の車両担当に聞いたところ、会社の車の30%が動かなくなったとのことだった。部品がなくて故障を修理できないからだ。羅先の自動車付属品商店の在庫が空っぽなのだ。当局は自力更生せよと言うけれど、お手上げだ」
ちなみに両江道、咸鏡北道、平安北道の市場は、現在午後2時から5時まで運営している。中国との国境都市である恵山市、茂山郡、会寧市、新義州市は、晩6時から翌朝7時まで通行禁止になっている。夜間の脱北と密輸を警戒してのことだ。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
※12月15日18時に暖房用の薪の価格を追加しました。