◆わずかな国産薬もニセ物が横行

それでは、国産の薬品はないのだろうか?

国内工場からアスピリン(鎮痛剤)、アモキシリン(抗生剤、北朝鮮では気管支炎、風邪として使用されることが多い)などが少し出てきているが、ニセ薬があまりに多くて、住民たちはほとんど服用しない」と、別の協力者はいう。

実際に具合が悪くなると頼れるのは民間療法しかなくなっており、病院に行っても勧められる。風邪薬として五味子、クコ(枸杞)を茶にして飲む。心得のある住民による鍼灸が大流行りで、料金は一回で5000ウォン(訳180円)だという。

市場で売られていた国際機関からの支援薬品「アモキシリン」。病院から横流しされたものだ。現在は横流し品すら枯渇した。2014年10月撮影アジアプレス。

◆国際支援の結核薬の搬入を拒否

科学雑誌「サイエンス」が11月14日に、国際支援団体が北朝鮮に送ろうとした結核薬が、当局が拒否して搬入できないでいるという記事を掲載した。韓国メディアが一斉に報じている。

ある支援団体が準備した40万ドル相当の結核治療薬は、インドでコンテナに保管されたまま足止めになっているという。結核薬はほとんど底をついたはずだという専門家のコメントも「サイエンス」が伝えている。

結核は咳、痰、発熱などコロナと似た症状が出るため、北朝鮮では「疑わしきは隔離」という防疫当局の方針で、厳格に自宅で隔離される。平安北道の状況を現地の協力者は次のように説明する。

隔離されても、治療なし薬なしだ。隔離中に死亡するケースが相次いでいるが、我われにはコロナなのか結核なのか分からない。当局は結核だと言っているが…

死亡後も統制は厳格だ。
家族が隔離中に死ぬと火葬場から車が来て運んでいく。遺骨の受け取りも許されない。火葬場で保管だ。葬儀の後に山や川に散骨する人が多かったのだが、それも厳禁になった」と、両江道の協力者は述べた。

支援物資や医薬品輸入まで制限するのは、コロナ対策としても明らかに過剰な措置だ。そのために、コロナ以外の疾病で死亡する人が増えては元も子もない。

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