最近の作品では、米ミネアポリスで警官に殺害された黒人男性、ジョージ・フロイドさんの肖像も手がけた。(2020年・撮影:ムハンマド・ジャマロ)

先月、日本人青年がベルリンのロシア大使館の前でシリアでの拘禁者と連帯するためのハンガーストライキをしていることを知りました。

日本の情報に接する中、1977年に日本人の少女、横田めぐみさんが北朝鮮に拉致され、娘の帰国を訴え続けていた父親が、願いかなわずして亡くなったニュースを読み、めぐみさん拉致も人ごとではないと感じました。そこで連帯の意味も込めて、この父娘を描くことにしました。

アジズさんはイドリブで建物の壁にペイントしたり、子どもたちに絵を教える活動にも取り組んでいる。(2020年11月・撮影:ムハンマド・アル・アスマール)

描いているあいだ、私は5年前にダマスカスの検問所で治安部隊に逮捕された叔母と彼女の娘たちのことを考えていました。彼女たちはその後、行方不明です。他に友人夫婦も拘束された後、行方が分かっていません。かれらはテロリストなんかではありません。ここでは娘や息子の行方が分からず苦しむ親の姿は人ごとではないのです。

アジズさんが子どもたちに絵を教えるのは、戦争の暗い空気から抜け出し、心を癒やしてもらうためでもあるという。(2020年・アジズさん提供)

◆シリアで続く拉致・拘禁の現実知って

私の家は4回攻撃に遭いました。破壊され、隣人の5人が亡くなりました。この寒さの中、家を失った何百万もの人たちがテントに身を寄せているのを見るのは辛すぎます。

私は学校や避難民キャンプなどで、無償で絵を描く活動をしています。子どもたちに絵を教えたりもします。子どもたちが、さまざまな色を使って絵を描くことで、戦争の重苦しい空気から解放され、笑顔になってほしいと願っています。

空爆や砲撃で激しく破壊された住宅地の壁の作品の前で。左がアジズ・アル・アスマールさん(48歳)。(2020年11月・撮影:ムハンマド・アル・アスマール)
瓦礫のなかの壁画。家族がアサド政権によって拉致されたアジズさんは、悲しみと怒り、そして自由と希望への願いを込めて表現活動を続けている。(2020年11月・撮影:ムハンマド・アル・アスマール)

私たちは自由を愛する善良な市民です。アサド政権に拘禁されている人たちについて、知ってほしいと思います。私たちも日本や他の国で拉致や誘拐された人たちのことに心を寄せたいと思っています。

新型コロナウイルスとアサド政権の「危険性」を掛け合わせて風刺壁画アートに。(2020年・撮影:ムハンマド・ジャマロ)
シリアではアサド政権による拉致、拘禁が続いてきた。他方、内戦の混乱の中で武装諸派や犯罪集団が政治目的や身代金目当てで拉致、誘拐を繰り返している。行方不明者は数万にのぼるといわれる。(地図・坂本卓/アジアプレス)

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