車椅子生活になったファティマは、家の前から外を眺めるだけの日々が続いた。
「買い物に出かける人や路地で遊ぶ子どもたちが、みんな私から遠くの場所にいるような気持ち」。
ずっとうなだれていた彼女の目が忘れられない。学校で勉強することが願いだったが、小学校は家から遠く、車椅子でたどりつくことはできなかった。
◆今年10月、やっと学校に……
今年に入り、支援団体が通学を手助けしてくれることになったものの、新型コロナ感染防止の影響で、わずか1カ月ほどで休校に。
今年10月中旬、近所に新たな小学校が開校されることになり、彼女も通えるとの知らせを受けた。私はラッカにいるファティマとネット回線を通じて顔を見ながら話をすることができた。13歳になり、スカーフで髪を覆い、少しお姉さんらしくなっていた。
「やっと行ける。うれしくてたまらない」と笑顔いっぱいだった。
開校日、通学に付き添った近所の青年が写真を撮ってくれた。これまで学校へ行っていなかった彼女は、小学3年生のクラスに編入することになった。
地元の取材協力者を通して校長に話を聞くことができた。ナワール・ムハンマド先生(27歳)は話す。
「戦火で家族を失い、心に傷を抱えただけでなく、生活苦から学校をあきらめ、くず拾いの仕事をする子も大勢います」。
ISが去って3年がたつなか、教育を取り戻すのは容易ではない。
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