◆「みんなを苦しめたISを倒すために、母・姉妹が殺されたのはしかたないの?」
ファティマの家族のように米軍・有志連合の攻撃で、命を落としたラッカの民間人は1600人以上にのぼる(人権団体アムネスティ調査)。一方で有志連合側は、その死者数の一割ほどしか認めておらず、補償もない。
ISが世界各地で過激な事件を繰り返していた中、米軍の強力な軍事作戦がなければ短期間にシリア、イラクのIS拠点を叩くことができなかったのは事実だ。だが、その掃討作戦の過程で多数の民間人が巻き込まれ、命を落とした現実がある。
ファティマは言う。
「ISは、みんなを苦しめた。だからといって私のお母さんや姉妹が殺されていいのでしょうか。それは『しかたがない』ことなのでしょうか」
(※本稿は毎日新聞大阪版の連載「漆黒を照らす」2020年11月10日付記事に加筆したものです)