◆経路不明でも認定の可能性
さらに同省は「クラスターが発生している事業場でまだ請求に及んでないことがあることは把握しているが、あくまで請求するのは労働者。私どもは職場で感染された場合は労災請求をお願いしますと経団連や経済団体への勧奨に努めている」と主張する。
申請が少ない理由について天野氏はこう語る。
「そもそも新型コロナに感染したときに労災になることが知られてない。感染がわかると差別されたりもするので、会社や医療機関が隠したがる傾向があります。愛知でも事業主が労災申請の手続きに協力しなかった事例があった。そうした場合に会社との関係が悪化することをおそれて請求をためらってしまうなど、二重三重の課題があります。国は仕事で新型コロナに感染したときに労災対象となることや、事業主が申請に協力しなくても手続きができることをもっと発信すべきです」
さらに「製造業は実習生も多い。外国人の労災が相当埋もれているんじゃないか」と懸念している。
同省は啓発用のパンフレットを作成しており、外国語版についても発注済みで「可及的速やかに進めています」(補償課)と強調する。
天野氏はこうした国の対応は評価しつつも、「請求件数は増えているが問題の傾向は変わってない。また埋もれている者も多い。厚労省はまだまだ注意喚起が足りない」と注文をつける。
意外に知られていないが、正社員だけでなく、パートやアルバイトなどでも労災給付を受けることができる。
労災認定されれば、健康保険などでの治療と違って自己負担なしの無料で治療を受けることができる(新型コロナの場合、指定感染症のため入院医療費は公費負担)うえ、療養期間中の休業補償(給与の約8割)も給付される。また最近問題になっている後遺症の治療についても療養・休業補償の対象となる。
天野氏は感染経路がわからなくても「労災申請を」と訴える。
「通勤や近所のスーパーに行ったとか散歩したくらいでは私生活上の感染と判断しないことが認定事例からうかがえます。(明らかに業務外の感染でなければ)認定される可能性は十分あるので申請してほしい」
労災申請の相談は全国労働安全衛生センター連絡会議(電話03-3636-3882、月~金曜日午前10時から午後4時)で受け付けている。また同センターのウェブサイトからはメールフォームによる問い合わせも可能。
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